だし工房 宗達

昆布などの佃煮の老舗「神宗」がプロデュースする「だし工房 宗達」。だし専門のショップとして、手軽に本格的なだしを引くことができるオリジナル商品や手法を提案しています。今回はフラッグ店の京都店におじゃまし、だしの魅力を伺いました。

コーヒーを淹れるのとまるで同じ方法。これで一流料理人なみのだしが取れるとは驚き。「実はサイフォン式でもおいしいですよ」と和田さん。

目からうろこの斬新手法 "ハンドドリップ"でだしを引く

京都・錦市場の賑わいから、少し外れた静かな路地。スタイリッシュでモダンな佇まいの1軒が「だし工房 宗達(京都店)」です。扉を開けると、ふくよかなだしの香りがふわり。幸せな気分に満たされます。すっきりと整えられたカウンターに通されると、店長の和田さんが取り出したのはコーヒードリッパーのようなもの。そこにペーパーフィルターを敷き、削り節と昆布が入ったパックの中身を入れると、ゆっくりとお湯を注ぎ始めました。待つことわずか1分半。滋味あふれるだしの完成です。コーヒーの抽出さながらのこの方法は、宗達オリジナルのだしの引き方。1パックから取れるだしは味噌汁約3杯分あります。「鍋でも同様の時間で引けて簡単。忙しい朝も引きたてだしの味噌汁が飲めますよ」と和田さん。誰でも手軽にできるとあって、男性にも人気だと言います。

さまざまな方法を試作して、ようやく完成した独自の昆布カット法。この不思議な形が旨みを引き出すのに大きな役割を果たす。

まじりっけなしの安心素材が本当の旨みを伝える。

添加物に染まった食品が当たり前のように店頭に並び、食の乱れが問題視されている昨今。「だしの旨みを知ってほしい」という社長の思いが、専門店を開く一つのきっかけだったそう。従来のだしの取り方でネックなのは、昆布の旨みを引き出すのに時間がかかってしまうこと。それをどうにか改善できないかと試行錯誤すること4、5年。独自の昆布カット法により、短時間でおいしさを生む製法に到達しました。素材は天然物の昆布と厳しい目利きで選んだかつお本枯節・まぐろ節のみ。旨みを最大限に引き出すため、試飲用のだしにはノルウェー産の天然水を採用するこだわりぶりです。シンプルかつ上質を極めた味は、多くの舌をうならせています。

3つの味を飲み比べる"ききだし"

だしがらもアレンジ次第で立派な一品に変身。

5種類ある一番だしパックは、それぞれに素材が異なります。そのうちの3つの味を飲み比べる"ききだし"をさせてもらうと、濃厚だったりすっきりしていたりと個性豊か。料理によってだしを変えるのも楽しみ方の一つなんだそう。和田さんいわく「良いだしを使うと素材の良さを引き出してくれるので、調味料が少なくてすみます。塩やしょうゆなどを減らすことができ、減塩にもつながるんですよ」。いろいろとお話を聞いていてふと気になったのが、だしがらの行方。捨てるのはもったいないのでは?「お客様には上手にアレンジしていただく方法をお教えしています」。そう言って目の前にサーブされたのは、だしがらを使った炊き込みごはんや佃煮。京都店では、混雑していなければこんな試食のサービスも。姿を変えただしに、またおいしさの新発見。和食の奥深さに脱帽です。

だし工房 宗達の人気商品

オリジナルブレンド「行平」

独自の比率で旨みを引きたて合うようにブレンドされた一番だしパック。人気を分ける3種類は風味もそれぞれ。

こいくち醤油 かえし
うすくち醤油 かえし

醤油や砂糖、みりんを合わせた調味料。引きたてのだしで割ってめんつゆや煮物にすると、簡単に味が決まります。

タイミングがよければ出合える、うれしい試食のサービス。だしがらまで素材を味わい尽くせるのは、上質だからこそ。

DATA:

だし工房 宗達(京都店)

京都府京都市中京区蛸薬師通堺町東入雁金町375番地4

TEL 075-256-8752

営業時間 11:00~19:00

定休日 水曜日

URL http://www.soutatu.co.jp/

(2014年7月 現在)

だし工房 宗達 からのメッセージ

京都店では、だしの取り方がわからない人や上手にだしが取れないという人に向けて、だし教室を開催しています。だしの取り方の基礎知識などを学び、試飲や試食もある1回完結型教室です。詳細や日程などはホームページでご確認ください。

【取材レポート】
旨みのことや商品開発の秘話など、身になるお話が満載でしたが、中でも興味深かったのは、だしと心身の関係。だしが美肌やダイエットに有効なことは知られていますが、風味が脳に働きかけ、精神を落ち着かせる効果もあるのではないかと、近年医学的な視点からも注目されているそうです。そんな可能性を秘めただしの魅力を子どもたちにも伝えていきたいと、同店では小学校でもだし教室を開催。最近キッチンカーができたらしく、全国各地を回ってだしのすばらしさを広げるのがこれからの目標だそうです。