食育への想い

■良い食と食育の普及事業で社会への貢献をめざし起業

もう30年前になりますが、そもそも私が日本食品薬化を立ち上げたのは、20代の時から10年近く続けてきた父の介護がきっかけでした。父の身のまわりの世話をする中で人間と食、そして健康の関係性について、身を以て知る機会を得ました。そうした中で人の役に立ちたい、世の中に貢献する事業を興したいという思いがつのり、できることは何かを自問自答した結果から行き着いたのは、人の全ての健康のもととなる「食」、「食育」に関する事業だったのです。1989年、30歳で創業した当時、世の中では、まだ食と身体の関係や食の大事さ、食文化の大切さは今のようにクローズアップされておらず、「食育」という言葉自体も珍しい時代。このことに危機感を覚えた私は、父の介護を続けながら、まだ世間の前例がない中で起業し、手探り状態で食に関する研究と食育の普及・啓蒙活動を事業として行ってきました。

そして阪神・淡路大震災が起きた1995年、自分の自宅家屋も全壊するという災害に見舞われながらも事業を継続し、1998年に“食で健康になる”をテーマとした「食育大事典」という、今も事業の根幹となるWEBコンテンツをスタート。当時からこだわってきたことは、収益よりも食育の普及を重視し、食と正しく向き合うこと、そして後世に「食のあり方」について正しく伝えることを目的に健全な食生活の実現をめざして進めてまいりました。その間には無農薬ブームやそれこそ食育ブームもありましたが、商業ベースに捉われて自分達の事業の本質が絶対にブレないように考え、判断してまいりました。そのためスポンサー収益もとらず、自社独自のメディアとして「食育大事典」を運営してきたことで、真摯に食に関わる多くの人たちや企業と出会え、多くのことを学べました。 


■基盤が整い、次のステージへ。日本の食を守る新たな事業

事業スタートから30年の歴史を積み重ねてきた今、当社で展開しているのは、「食育大事典」やセミナーなどを通じた食育の普及・啓蒙活動と共に、食品メーカーや健康補助食品会社からの委託を受けて食品原材料の成分研究を行い、製造、供給を行うサービス、食の根本である水の研究、分析事業、そして農作物に関するコンサルティングなどなど、幅広い“食”に関わる事業です。 長年“食”について事業を展開してきて分かったことは、“食”とは非常に大きな広がりを持ったものだということです。安全・安心な食を追求していくと植物や動物が育った環境、つまり空気、水、土壌についての知識、さらにもっと大きく捉えれば、環境問題や生活文化の問題にも際限なく広がっていきます。また “食育”の普及という面では、単に食事の教育ではなく、食を通した人と人の関わり、そこから生まれる「人としての生き方」や心を伝えていくことも大事だということにも認識は深まりました。

こうした長年の研鑽により、当社としても事業の核となる「食で健康になる」という理念はさらに強固になり、長年かけて培ってきたノウハウと共に、食に関わる研究者や文化人、 料理人たちとの強力な繋がりが築かれ、時間はかかりましたが、ようやく基盤が整った、スタートラインに立ったと言える状況になりました。今世の中でも、子ども達に必要な教育要素として、知育、体育、徳育の次に食育という4つめの大事な分野だという認識が深まっていることは、長年、「食、食育」に関わってきた私にとってもうれいしいことです。

こうした会社としての基盤が整い、世の中も食に関する関心が高まりつつある今、新たな事業として計画しているのは、これまでのノウハウと繋がり、情報発信力を活かした“農家と連携した安全な食”を販売するショッピングサイトを軸としたEコマース事業です。今世の中は地球規模で見て気象の異常が激しくなり、食物生産にも大きな影響を与えています。また人口増加による世界の食糧難も捨て置けません。そんな中、日本では食料自給率がカロリーベースで40%以下、そして農家や畜産家、漁業に関わる人々の高齢化による将来的な生産者の不足など、多くの問題を抱えています。ショッピングサイトでは、こうした食に関わる社会問題の解決にもつながるよう、一味違ったショッピングサイトとして農家や生産者を守り、食の安全も広げていくことを目標に展開していきます。


■多分野の知識、知恵を持つ人材が新しい食を創る存在に

これから当社は、今までの事業で蓄積してきたノウハウと繋がりという資産を武器に他分野に向けて新しい事業やサービスを生み出し、展開していく第二創業期とも言える状況です。こうした環境で求めているのは、事業に直接関係する農業や薬学を学んだ人は勿論、企画力やITの知識を持った人など、色んな分野の知識を持って、“食”を広げていってもらえる人材。

当社では、「農業をやりたい」「食を薬に変える、食薬に関わりたい」「食とITやIOTを組み合わせた事業を生み出したい」などなど、“食に関わりたい”という想いを持っていただける人なら、どんなことにもチャレンジできます。新しい取り組みとして、これから当社が主体となって展開する予定のニュージーランド、オーストラリアでの「ファームステイ」を皮切りに、全世界に農業文化や生産者の思いを広げていくことにも参加が可能。こうした新しい事業を自分達の力で創り、育てていってくれる人は大歓迎です。

農業、漁業、畜産業、薬学、食品、商品企画、ITなどなど、ありとあらゆる分野の知恵を結集して、ぜひ人々の健康や日本の食文化の継承につながる大切な“食”を広げていって欲しいと願っています。


■人が生きる上で大切な“食”をいつも意識して幸せな将来を!

これから社会人になる方に伝えたいのは、人生にとって食は本当に大切だということです。当社では社員に「“食”と言う字は“人に良 い”と書く。そして、良い食は、良い人をつくる」という言葉を常に発信しています。これは健康で幸せな人生を送っていく上でみなさんにも特に肝に銘じておいていただきたいですね。ですから、1日1日、1食1食を大切にして欲しい。安心・安全な食べ物や水に留意することは、自分の健康な毎日につながり、健康だからこそ色んなことにチャレンジでき、がんばれる原点です。そしてその知識は自分だけでなく、自分の周りの身近な人や会社の仲間、世の中の人にも広げていけますし、人を幸せにする力にもなります。そうしてもっとさらに食に興味を持ってもらい、食品をつくる生産者や土壌、地球環境にも思いを馳せていただければ、食というものがどれだけ世の中のあらゆることとつながり、必要不可欠なものかが分かっていただけると思います。

食は命です。私たちと一緒に食を守り、伝える事業で社会をもっと良くしていきましょう。熱い思いを持ったみなさんと共に、事業も会社も創っていけることができたら、私も本当にうれしいですね。

【人に良い、良い人をつくる「食」】

株式会社 日本食品薬化
代表取締役 会長兼社長
片山源治郎