はも落とし(京都府)

鱧落とし(京都府)|食育大事典

鱧落とし(京都府)

祇園祭の頃の夏の京都に欠かせない食材「はも」。複雑に繋がる骨が多くある魚なので、そのままでは食べる事ができません。料理人たちは骨切り用の包丁で皮1枚を残しギリギリのところまでを数ミリ間隔で身と骨を包丁で切る「骨切り」というとても難しい技術を要します。骨切りをする事で、美味しく食べられることはもちろん、骨ごと食べる事でカルシウムを多く摂取できるのです。

鱧を使った料理は、鍋や焼き物、揚げ物、お造りなど、様々ありますが、鱧料理の定番は、骨きりをした鱧を湯引きした「鱧落とし(鱧の湯引き)」です。湯引きをした後、氷水に通して身を引き締め、冷やした器に盛り付けて、梅肉やからし酢味噌などでいただく。見た目にも涼しく、夏バテ対策にも優れている、昔から京都で親しまれている料理です。

鱧落としの歴史

鱧は体長1m前後ある細長く鱗がない魚です。口の中はとても鋭い歯が並び、カニや小魚、タコなどを食べながら海で生息しています。鱧が美味しい時期は、産卵を控えた6〜7月頃と、越冬のために栄養を蓄える冬。その頃は身が肥えて脂がのり、最も栄養価が高く美味しくなります。

鱧は小骨が多く調理に時間がかかりますが、それでも食材として京都に根づいたのは、生命力の強い魚だからこそ。輸送技術が発達していない頃にも、夏に瀬戸内海で漁獲された鱧を内陸部の京都まで生きたまま運んでくることができたからだといわれています。

骨切りをした鱧料理が食べられるようになったのは、桃山時代から江戸時代初期にかけてだと言われています。祇園祭は疫神怨霊を鎮める祭礼なので、疫病や伝染病の対策として、滋養強壮の強い食材「鱧」を食べるようになったのだそう。

鱧落としの豆知識

  • 料理人が目の前でシャリシャリと音を立て「鱧の骨切り」をする姿を見ると関西人は夏が来たと感じるそうです。
  • 骨切りには熟達した調理技術が必要なので「京都の料理人は骨切りを覚えて一人前」と言われる程。骨切りができる料理人は、関西に集まっていると言われています。
  • 江戸後期に大人気になった今で言うレシピ本「ひゃくちん」には、100種類以上の鱧料理が記載されています。

    薬剤師の食育コメント

    鱧は、糖質の代謝を助けエネルギーを作り出し、疲労回復に役立つビタミンB1や細胞の新陳代謝を促進、皮膚や粘膜の機能維持や成長に役立つビタミンB2を含みます。また皮膚や粘膜の健康維持をサポートし、脳神経を正常に働かせるのに役立つナイアシンやビタミンB6、動脈硬化を予防しストレスをやわらげる働きのあるパントテン酸、さらには、貧血を予防して、細胞の生まれ変わりや、新しい赤血球を作り出すために欠かせないビタミンである葉酸やビタミンB12を含みます。他にも、抗酸化ビタミンであるビタミンCやビタミンEを含むので活性酸素の発生や酸化力を抑え、動脈硬化、皮膚や血管の老化を防ぎ、免疫力を高めてくれます。骨や歯を構成するのに必要なミネラルであるカルシウムやリン、マグネシウムなども含み、疲労回復や利尿作用、高血圧の予防に役立つカリウムも多く含まれます。

    食育大事典の郷土料理

    鱧落としの作り方

    鱧落としの作り方

    郷土料理材料材料|2人前

    • 鱧(骨切りした生のもの)・・・100g
    • 酒・・・少々
    • 塩・・・小さじ1/2
    • 【辛子酢味噌】

    • 白味噌・・・30g
    • 砂糖・・・大さじ1
    • 酢・・・大さじ1
    • 練り辛子・・・少々(チューブだと2cm程度)
    • ※マスタードでも代用できます

    郷土料理調理ステップ調理ステップ

    1. 白味噌、砂糖、酢、練り辛子を混ぜ合わせます。辛子酢味噌の出来上がりです。
    2. 鱧を食べやすい大きさに切ります。
    3. 氷水を準備します。
    4. 鍋に酒と塩を加えた湯を沸かし、鱧を少量ずつ皮目から茹でていきます。(持ち手のついた網の上にの乗せて丁寧に浸して行くと良い)
    5. 身が開いたら(30秒程)、準備しておいた氷水に入れていきます。全て茹で終えたらキッチンペーパーで水気を丁寧に拭き取ります。
    6. 冷たい器に盛り、辛子酢味噌と一緒にいただきましょう。

    ※ 梅干し(3個)とみりん(大さじ1)醤油(小さじ1/2)を合わせた梅肉も美味しいです。
    ※ 薬味としてわかめやミョウガ、オクラなどを添えるとさらに美味しいです。