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五感を磨く「米育」とは

新たな分野への挑戦となる「my Taste」。日本人のお米に対する価値観を大きく変えるための一歩です。

米離れに歯止めをかけるには、単に食べておいしいだけで終わるのではなく、消費者からお米についてもっと知りたい、もっと食べてみたいという興味や欲求を引き出すことが重要だと橋本さんは考えています。その新たな試みとして2017年11月より「my Taste(マイテイスト)」と名付けた新事業に着手しました。「僕のやることは先を行きすぎていて、なかなか世間には理解されにくいんですよ」と苦笑する橋本さん。業界の異端児が次に目指すのは、「米育」という新たな教育ジャンルの確立です。

「お米は非常に身近な食べ物であるにも関わらず、日本の教育はまったく進んでいません。子どもたちが学校で学ぶのは、せいぜい炊飯器を使った炊き方くらい。僕は食育学を学んだ経験がありますが、そこでも栄養学しか教えてもらえませんでした」。

my Tasteはこうした閉塞的な環境に風穴を開け、お米の知識をボトムアップさせようと始まった取り組みです。プログラム参加対象の目安として設定しているのは、日本語の意味を理解し表現できる幼稚園年中くらいから小学校高学年までと、その年代の子どもを持つ親。お米を教材として子どもたちの五感を磨き、エンターテインメントの要素を盛り込みながら、体験を通して感性を育てていく能力開発プログラムとなっています。

楽しみながらお米を学ぶ

プログラムの教材となるのはお米。繊細な違いを五感を使って収集し、自分の言葉で表現することで感性を育みます。

「お米のパッケージやスーパーのPOP広告を見ても、お米の本当のおいしさを的確に表現したコピーはないと思いませんか。どのお米にも“もちもちとした食感”や“豊かな自然が育んだ”と似たような言葉が添えられています。これでは消費者がそれぞれのお米の違いを判断できず、結局は産地やブランド名といった知名度で選ぶことになってしまいます。けれども本来お米は産地や品種によって個性があり、同じブランド米でも同じ味とは限りません。ソムリエがワインの味を細やかに言い表すように、お米も繊細に表現されるべきものだと思っています」。

my Tasteではお米をテイスティングし銘柄を当てたり、品種による微妙な香りの違いを嗅ぎ分けたりしながら感覚を鍛え、子どもたちが自主的に自分好みのお米の味を見つけていくことに重きを置いています。また、感覚でとらえたお米の特徴をオノマトペを用いて表現することで、幼いころからの言葉づくりや相手に思いを伝える能力も磨いていきます。

「僕自身、一番おいしいお米はどれですか?と聞かれることが多いのですが、おいしいと感じる味覚は人によって違って当然。僕がおいしいと思っても、全員が同意するものではないと思います。my Tasteではお米の味を一定のスケールにかけて評価するようなことはしません。あくまでも自分がどんなお米をおいしいと感じるか。自分の味覚を大事にすることが最優先です」。

大人の知識力も上げたい

京都の有名料亭などで料理人として腕を磨き、独自の炊飯技術を極めた橋本晃治さん。究極の味を伝えています。

さらに大人に向けては「五感米育アンバサダー」という資格を設け、今後は養成講座にも乗り出します。講座では五感教育の基礎を学び、土鍋でのお米の炊き方や炊飯の極意など、これまで八代目儀兵衛が独自に培ってきた技術を習得。産地銘柄のお米を食べ比べ、舌の力と味を表現する能力をアップさせるなど、さまざまな角度から専門的なスキルを磨いていきます。知識や技術を身に付け子育てに生かすだけでなく、認定を受けるとmy Tasteの講師として活躍できたり、すでに食関連の仕事をしている人は自身のキャリアに役立てることができるなど、実用性が高いのも魅力です。

「味覚は幼いころに育つとよく言いますが、大人になってから鍛えても遅くはありません。僕自身、お米の味を明確に選別できるようになったのは今の仕事に就いてから。日本人は誰しも生まれつき繊細な味の違いをきき分ける優秀な舌のDNAを持っています。この講座でより多くのDNAを呼び起こすことができればうれしいですね」。

お米に対して正しい知識をもつ大人を増やし、米育ができる人材を一人でも多く育成していきたいと語る橋本さん。新たな挑戦がまたお米の価値観を変えていきます。

(2017年10月 取材・文 岸本 恭児)

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