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ブームに押されないために

JA岡山西 船穂直売所では採れたてのフレッシュなマスカット・オブ・アレキサンドリアを販売しています。箱に書かれた“まるふね”はブランドの証。生産者たちは産地の誇りを忘れず、上質なマスカット・オブ・アレキサンドリアを作り続けます。

また、フルーツに流行があることもマスカット・オブ・アレキサンドリアの人気に影を落としていると浅野さんはいいます。

「瀬戸ジャイアンツやシャインマスカットが好まれるのは、消費者がより変わったものや新しい味を求めるからでしょう。種なし品種であることも大きいと思います。アレキは種あり品種なので、やはり買うとなれば食べやすい方に手が伸びますよね。フルーツのブームは定期的にやってくるもので、時代の流れで消費者が離れてしまうのは仕方がないこと。産地ではこれまでも新しい品種が生まれては消えていきました。そのなかで130年以上の歴史を持つアレキは稀有な存在。現在登録されている品種の多くがアレキの系統を受け継いでいます。築き上げた伝統は僕たちが守っていかないといけないと思っています」。強い使命感は若手生産者の中に共通してあります。

若手農家が支える未来

船穂町後継者クラブの浅野貴行さん(右)と松井一智さん(左)。産地の発展のため日々懸命に努力を続けています。

地元の若手生産者を中心に構成されている船穂町農業後継者クラブはここ数年で加入者が増加。浅野さんたちは若い力を集結し、産地の将来を見据えた活動を広げています。

しかし森さんはその流れをよしとはしません。「奈良漬は奈良で生まれた食べ物。やはり奈良で育った野菜を使うのが一番おいしい」という持論に従い、信頼のおける契約農家に栽培を委託。多少値が張ってもできる限り県内産の野菜にこだわります。また、奈良伝統の野菜にも思いを寄せてきました。しょうがの奈良漬には辛味が強く筋のない奈良在来の小しょうがを採用。さらに新たな味を求め、目を付けたのが大和三尺と呼ばれるきゅうりです。

「農家が主体になって加工業者とタイアップし、アレキを使った新しいスイーツを企画したり、ホテルとコラボしてパフェを作ったり。どうしても出てしまうロス部分を有効活用してもらえるよう働きかけを行っています。それぞれの販売数量自体は少ないですが、カタログに載ったり口コミで広がったりする宣伝効果を期待しています」。こうした地道な活動が実を結んでいるのか、勢いが鈍化していた単価も最近ではV字の回復が見られるようになってきました。

「現在はアレキの年間収穫量が95.5トン、単価が1kg当たり2850円まで戻りました」と浅野さんは安堵の笑みを浮かべます。とはいえ、ブドウの生産量1位、2位を争う産地とは比べものにならないほど、そもそも作付面積が少ない地域。美しく粒の並んだブドウを作ろうと思うと生産量には限界があるといいます。量より質で勝負したいというのが船穂町の生産者たちの本音。 「僕らが目指すのは高品質高単価なアレキ。他の産地に埋もれることなく“まるふね”のブランドに誇りとプライドをもってこれからも良いものを届けていきたいと思います」と口をそろえる浅野さんと松井さん。若手の高い志が産地の未来を明るく照らしています。

(2017年7月 取材・文 岸本 恭児)

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