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経験とセンスで房をデザイン

ピンセットばさみは作業に欠かせない道具。粒をそろえたりするときに使います。ブルームがはがれたり粒に傷がついたりしないよう、手のひらにフィルムを置いて慎重に収穫します。

浅野さんがおもむろに取り出したのは畑作業の相棒であるピンセットばさみ。摘粒を行うときなどに欠かせない道具です。「ランダムな方向になっていたり寝ている粒を起こし、正面を向くようそろえたり粒同士で支え合うようにして、最終的に美しい“面”に整えます」。

松井さんも出来上がりの房の形を思い描きながら作業を行うそう。「イメージする形が生産者ごとに少しずつ違い管理方法も違うので、自然と出来上がりにも違いが生まれて個性が出るんですよ。同じアレキでも、生産者同士は見ただけで誰が育てたものかがわかるんです」。

デリケートな粒を傷つけないよう慎重に作業を進める姿は、まるでわが子を愛おしむかのよう。こうして丹精込めて育てられた一房は細心の注意を払って箱詰めされ、店頭に並べられます。

【コラム】白い膜の正体は

マスカット・オブ・アレキサンドリアの粒をよく見てみると、表面がうっすらと白い膜で覆われているのがわかります。農薬や汚れと勘違いされやすいのですが、これはブルーム(果粉)と呼ばれるもの。病気などから粒を守るためブドウ自身が作り出しているものです。鮮度を保つ効果もあり、いわば天然のワックスといったところ。ブルームがしっかりと付いていることは新鮮さの証です。繊細ではがれやすいため、収穫時は手のひらにフィルムを置き丁寧に枝をカットするのが鉄則。店頭ではブルームがあるかどうかを目安にすると、よりみずみずしいブドウを購入することができます。

産地で起こっている人気の変化

一番粒がそろった“顔”が正面にくるよう意識して箱詰めされ、デパートやフルーツ専門店などに並びます。

高級フルーツとして長らくトップに君臨していたマスカット・オブ・アレキサンドリアですが、このところは低迷気味です。絶頂期の平成9年は、船穂町だけで約10億あった販売額もみるみるうちに減少。作付面積の縮小も顕著です。

「船穂町におけるアレキの今の作付面積はピーク時の3分の1程度。平成9年には25ヘクタールあったものが平成16年になると20ヘクタールにまで減り、平成22年には10ヘクタールになりました。現在は7ヘクタール弱にまで落ち込んでいます」と浅野さん。この厳しい現状に生産者たちは皆頭を抱えています。

「作付面積が減少しているのは、アレキだけを専作する農家が少なくなってきたためです。近年はシャインマスカットや瀬戸ジャイアンツといった新しいブドウが台頭してきており、農家はより需要の多い品種の作付を増やす傾向にあります。少し前までは瀬戸ジャイアンツがマスコミにたびたび取り上げられて一躍話題になり、今はシャインマスカットが一番人気。どちらもすでにアレキの出荷量を逆転し、両者とも価格が高騰しています」。手軽さや経費が抑えられることも生産者が心移りする理由です。

(つづく)

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