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夢の構想を一歩ずつ実現

地域活性化につなげたいと耕作放棄地で栽培を始めたカモミール。毎年春には白く可憐な花を咲かせます。

プロジェクトを具現化するうえで、まず取り組んだのが雇用の創出でした。地元で暮らしながら長年農作業に汗を流してきたお年寄りたちにハーブや野菜の栽培を委託。収穫したものを自社で買い取り、農家レストランで食材として使ったり商品の原材料にするほか、大手企業などに販売することで収入を得られるシステムを構築しました。耕作放棄地を活用しての栽培は、環境保全にもつながります。

今、最も力を注いで栽培している一つがカモミール。4月も終わりに近づくと、カモミールを育てている3万平方メートルの畑は一面真っ白で可憐な花に埋め尽くされ、芳しい香りに包まれます。収穫は体験イベントにし、地域活性化にも一役。山之内産のカモミールは「山之内ハーブ」と名付け、ハーブ水、ハーブ油、ハーブバームとスキンケアシリーズとして発売し、高い評価を受けています。

ヒポクラテス構想には大学や企業など多方面からの協力が得られ、今年は農と食について学べる学校をつくることが決定し、開校に向けて進んでいます。 「農家レストランでたった1食だけ健康を意識した食事を取ってもらっても、毎日継続して同じような食生活が送れなければ意味がありません。興味のある人たちがレシピや調理方法などを習得できる場が食の学校。家庭に持ち帰って実践できるようにしたいと考えています。農の学校では若い人たちにこの地域で実践的に野菜づくりを学んでもらいます。同時に販売のノウハウも身につけてもらい、やがては自立しこの地で就農してもらうことが目的です。農業は優れた栽培技術を持っていても独立するのが難しい業種。でも私自身が33年間ハーブを育てて販売してきて、大手へ売り込むテクニックや知識を培ってきました。それを少しずつ次世代へ渡していけたらと思っています」。

【豆知識】ヒポクラテスって?

ヒポクラテスは紀元前5世紀に活躍したギリシャ人医師。病気を自然現象と捉え、呪術や迷信と強く結びついていた医術を科学的に進歩させました。その業績を称え、医学の祖や西洋医学の父と呼ばれています。ヒポクラテスは治療にハーブから抽出した液体を薬として使用し、病気やケガで苦しむ人々を救ってきました。また、野菜やフルーツが健康に良いと説いたのも彼が最初だったと言われています。その格言の中には「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」「食べ物でも治せない病気は医者でも治せない」など、食と健康の深い関係性を解くものが多く、今も語り継がれています。

過疎地を最先端研究の場に

バジルやミントなど育てやすいハーブの苗も販売。ガーデニングにチャレンジしてみたくなります。

経営者や指導者として忙しい毎日を送る傍ら、研究者としても活動を続けている福岡さん。積極的に取り組んできたのが不凍タンパク質の研究です。不凍タンパク質とは凍結防止や氷点下での氷の再結晶の成長を防止する物質であり、魚や植物類の生体活動の維持に必要なもの。白菜やネギなど冬場の野菜が霜に当たると甘くなるメカニズムに着目し、大学などと共同で研究を推進。ハーブエキスの抽出で培った技術を応用して、2003年にカイワレ大根から不凍タンパク質を抽出することに成功しました。

それまで天然物から不凍タンパク質を抽出した前例はなく、功績が認められて2015年には文部科学大臣賞を受賞。現在は化学メーカーのカネカの協力を得て、不凍タンパク質を含有するエキスを商品化しています。 「不凍タンパク質は食品に添加するとデンプンの老化防止になり、食品添加物の代用になります。野菜と水だけで抽出できるため安全性が高く、安価に製造できるのが魅力。今では冷凍食品など多くの加工品に使ってもらっているんですよ」。

ホルマリンの代わりに利用する研究も進み、血液や臓器の保存液や建築資材として応用することも検討されています。こうした先進技術の研究を行う場所としても地域に企業を誘致し、さらなる活性化につながればうれしいと福岡さん。夢はまだまだ膨らみそうです。

(2017年4月 取材・文 岸本 恭児)

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