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産育食は曖昧でいい

トイロニで人気のサラダプレートランチ。ワンプレートにたっぷり盛られた野菜からはみずみずしさが伝わります。

産育食と聞けば、妊産婦さんたちが食べることを控えた方がよい食品や、何をどれだけ食べればよいといった厳格なスケールが定められていると思う人も多いはず。ところが小附さんからは細かな基準についての話はまったく出てきません。驚いたことに、産育食には明らかな定義すらないとのこと。

「鉄や葉酸が1日に何㎎必要というのは厚生労働省がまとめた妊婦授乳期の食事摂取基準。産育食とイコールではありません。産院やトイロニで僕たちが作っている食事だけを産育食とも限っていません。人それぞれの捉え方があっていいのが産育食。活動を始めて9年になりますが、実は僕たちも未だ模索中です。最近ようやく何となく、産育食はモノではなくコトなのかもいうところまでたどり着きました。妊娠を望んだときから授乳期までの食をちょっと意識すること、態度やスタンスとしてとらえることが本質なんじゃないかと。とはいっても、やはりきっちりとした枠は決めず、とらえどころのないものでいいと思っています」。

この思いを原点に「みらいたべる」を設立したのは2008年のこと。そして活動の柱として掲げたのが産育食の提案と提供でした。

継続してこそ本物

正月用の入院食は和食料理店のような豪華さ。すべて手が込んでいて細工の一つ一つが美しいこと!

曖昧模糊としている産育食ですが、ただ1つはっきりしているのは「産育食は継続されるものでないと意味がない」ということ。「楽しく作っておいしく食べて。何度も作っているうちにいつの間にか家族の味になり、子どもに受け継がれ、また次の世代で家族の味になる。そんなイメージです」。

舌の記憶と命の育みが自然と連鎖していくことが小附さんの描く産育食の一つの在り方。自分たちの手掛けた料理が家族の味を生み出すきっかけになればと、要望があればお産入院中のレシピを患者さんに渡したり、作り方のコツを伝授したりすることもあるそう。産育食にまつわるレシピ本を出版しているのも、実践で培った知識やノウハウは惜しみなく世に渡し、1人でも多くのお母さんや赤ちゃんを支えたいとの思いから。「こうやって盛り付けたらおいしく見えるんだとか、薄味だけどしっかり味を感じられるのは出汁が使ってあるからなんだとか。僕らの料理から何かしらヒントを得て、家でも作ってみよう、まねしてみようと思ってもらえたらうれしいじゃないですか」。

また産育食は、必ずしも健全でナチュラルなものでなくてもよいと続けます。母体がそのときに欲している食べ物もまた産育食。妊娠初期にみかんしか食べられなかったとしても、しばしばファストフード店のフライドポテトが恋しくなってもよし。普段はしっかりごはんを作っている人でも、妊娠中は体調が悪い日や面倒な日もあるはず。そんなときはコンビニに頼るのもあり。赤ちゃんを気づかえば罪悪感を覚えるこんな食事も決して否定しないこと。食べることに重きを置き、素直に受け入れてほしいと言います。

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