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シードバンクとしての役割

伝統野菜以外にもえごまといぐさを栽培。えごまはα-リノレン酸を多く含むという優れた作用に注目し研究中。

「本来の伝統野菜は固定種なので、種から農家ごとに異なる個性がありました。そのうえ土の状態や栽培方法が違うのですから、同じ品種の野菜でもおのずと出来上がった味に差が生まれるわけです。農家は振り売りの際にごひいき筋から味に対する評価を聞き、好まれる味の種だけを残してさらに良いものを栽培する努力を続けてきました。苦労して改良を重ね、先祖代々受け継いてきた種は門外不出。家の家宝として扱われていたのです」。

そのため、松田先生や生徒たちがいくら頭を下げても最初は全く取り合ってもらえませんでした。門前払いが続いても粘り強く働きかけを行ったのは「当校が将来的に伝統野菜のシードバンク機能を果たすことができればという思いもあったからです」。

生徒たちのひたむきな努力と成果が世間で認められ始めた今は、農家のほうからすすんで種を譲ってくれる機会も増えました。人から人へとつながれていく温かな種のリレーが、京の伝統野菜の明日を切り開いています。

伝統食を継ぐ未来の瞳

案内役の古田さん(上段左)と瀧瀬さん(上段右)。企業が見学に訪れた際もガイドをするらしく、説明は完璧でした。 「買ってください。おいしいですよ!」という振り売りの声に記者も思わず野菜を購入してしまいました(下段)。

京の伝統野菜づくりを通して、毎日貴重な経験を重ねている生徒たち。ときには育てた野菜をツールにビジネス関連のコンペティションに参加することもあります。市場のグローバル化が進む中、今後は栽培した野菜の付加価値をどうつけていくかも大きな課題。「伝統野菜は大量に売れるものではないですし、農家さんたちが独自で市場を開拓することはなかなかできません。この厳しい状況を生徒たちが若い力で打開してくれればうれしいです」と松田先生は期待を寄せます。

何かと忙しい毎日でも、古田さんと瀧瀬さんは「野菜づくりはやりがいがあって楽しい」と顔を見合わせてニッコリ。それも年頃の女子高校生には畑仕事で辛いこともあるのでは? 「夏は朝の7時半から、冬は7時45分から畑で観察と収穫を行います。特に寒いときは朝が早いのがちょっと大変ですね」と苦笑いの古田さん。瀧瀬さんは「桂うりは実が重いうえに葉っぱに小さなトゲがたくさんあって痛いのでちょっと苦手。夏の炎天下での収穫にも苦労します」とかわいらしい一面をのぞかせました。

古田さんは農業大学に進学し、野菜栽培についてもっと深く学ぶのが目標。瀧瀬さんは小さいころから山や自然が大好きなアウトドア女子。森林学科のある大学で自然や植物の魅力を追求していきたいと、キラキラした目で夢を語ってくれました。

(2016年12月 取材・文 岸本 恭児)

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