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伝統野菜の代表格「九条ねぎ」

シャキッと元気よく育った黒種の九条太ネギ。冬にかけてますます長く太くなるのだそうです。

「たくさん育てている伝統野菜の中でも、私たちが今一番力を注いでいるのが九条ねぎです。ちょうど食べごろなんですよ」と畑を指さす古田さん。どっしりと大地に根を下ろし、深い緑色の葉がイキイキと空に向かって伸びています。その1本1本が普段スーパーなどで売られているものより立派で、目を見張るほど極太。長さも1mを超えています。「実は九条ねぎには2つの種類があるんです」と古田さん。それぞれの特徴を教えてくれました。「飲食店や家庭などでもよく使われている一般的な品種は浅黄系と呼ばれるもの。やや細身なので九条細ねぎともいいます。私たちが栽培しているのは黒種系です」。さらに瀧瀬さんが「成長すると1.5mの長さにまで達し、直径が缶コーヒーくらいまで太くなることもあるんですよ」と続けます。

黒種系は九条太ねぎともいわれている希少種。霜が降りて寒さが深まると、葉の中に透明でヌルヌルとした「あん」が増大し、甘味とうま味が増します。普通のネギより柔らかいのもおいしさの秘訣。その反面、「背が伸びすぎるとささいなことで倒れたり折れたりすることもあり、売り物にならなくなるんです」と古田さん。転倒防止のロープを畝の両サイドに渡すのも、生徒たちの大事な仕事です。

手間をかけて育ててこそ

柔らかすぎるために大きく育つと折れてしまうこともたびたび。こうなると商品にはなりません。

京の伝統野菜としての九条ねぎは、もともと浅黄系より黒種系が主流でした。しかし今では黒種系を栽培する農家が激減。市場でもめったに見かけないことから、地元ですら存在を知る人が少ないといいます。時代とともに黒種系の影が薄くなっていったのにはいくつか理由がありました。

まず一つに、栽培期間が1年以上を要し、非常に手間暇がかかる野菜であること。桂高校で黒種系の種まきを行うのは収穫前年の10月初旬。冬を越え、春を過ぎ、初夏のころに育った苗を一度掘り上げて干します。こうすることで暑さを嫌う苗を直射日光から防御。同時に養分をたっぷりと貯め込ませます。そして暑さが和らぐ夏の終わりにまた畑へと戻す作業を開始。11~3月に成長のピークを迎え、ようやく質の良い九条太ネギが収穫できるのです。

これほどまでに手をかけて育てても、長く柔らかすぎるために今の流通システムには向きません。加えて、一般的に青ねぎは細くて薬味に用いるものというイメージが根強いため、太すぎて薬味に不向きな黒種は需要が低め。市場価値も自然と下がってしまいました。

黒種系の魅力を広げたい

転倒防止のロープを畝の両サイドに渡し、大切に育てられています。

全国的には知名度の低い黒種系ですが、京都では変わらず食通に人気の味。個性の際立った風味や食感に魅力を感じる料理人も多く、栽培の追い風となっています。桂高校のつくる九条ねぎは上質と地元でも評判。府内のレストランに卸すだけでなく、企業やパティスリーにアイデアを出して商品化したりと売り込みにも積極的です。

松田先生は「黒種系の栽培を始めたのには、関西にもともとあった太青ネギを楽しむ食文化を生徒たちとともに残していけたらという思いがありました。夏の鱧のように、冬になったら京都に足を運んで食べてもらえるような魅力的な野菜に育ってくれることを願っています」と胸の内を語ります。

また一方で、生徒たちは黒種系の新たな魅力を発見しようと日々熱心に研究を進めています。そのなかで、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2つを併せ持つという珍しい機能性に着目。食べることは腸内環境を整える一助にもなることから、病院食に応用ができるのではないかと地域の病院に提案。医療関係者たちの協力のもと可能性を探っています。

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