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店を持ちたい夢が現実に

自ら内装を手掛けた現在の店内は、女性らしいやわらかな雰囲気。タイルや壁もかわいらしくデコレーションされています。

渡仏前の横田さんは、ほぼ料理の経験がない初心者。飛び込みでフレンチレストランやベーカリーで働き作り手の裏側を知ったことや、日本人のアイデンティティーを取り戻す体験ができたことで、少しずつ具体的な目標が見え始めます。「小さくてもいい。日本で自分の店を持ち、自然食を提供していきたい。私が母の料理から気づきを得られたように、多くの人に自然な食事からさまざまなことを感じ取ってもらえたらうれしい」。

思いが実り、レ コッコレをオープンできたのは29歳のときでした。スタートは今の場所より少し北。大阪市開発公社が運営・管理する船場センタービル10号館の地下です。「女性起業支援とビル再建を目的とした飲食街ができるにあたって出店者を募集していました。その広告をたまたま新聞で目にし、10軒あるうちの1軒がまだ決まっていなかったので企画書を出したところ、運良くOKをもらえたんです」。オープンまでは1ヵ月足らず。準備もままならないバタバタの状態で、ランチメニューに載せた料理は2種類でした。1つがカレー。もう1つが今では店の定番メニューになっている重ね煮のリゾットです。

店の味を支える重ね煮

自家製のスクナカボチャをベースに、キノコやタマネギを重ね煮して作ったソースでリゾットにした秋限定の一品。重ね煮ならではのうま味を生かして。夜メニューのカレーはランチものとは変化をつけ、日本酒や酒粕を加え米粉でとろみをプラス。やさしさの中にコクが広がります。

重ね煮は野菜本来が持っているうま味を最大限に引き出すシンプルな調理法のこと。東洋の自然観である陰陽論に基づき考案されました。手順はとても簡単です。イモ類、キノコ類、根菜類などの野菜をカットし、決められた順番に鍋の中で塩と重ねて火にかけるだけ。あとはふたをして、じわじわと野菜から染み出る水分だけで蒸し煮にしていきます。アクですらおいしさのエッセンスに変えてしまうのが重ね煮の魅力です。

横田さんがこの調理法に出合ったのは、店を始める少し前のこと。野菜から生まれるスープの底知れぬ深みと、たとえようのない素材の甘さに感動し、家でも頻繁に作っていました。自然な食のすばらしさを一番ダイレクトに伝えてくれる重ね煮こそオープンのメニューに好適。重ね煮の基本をベースにアレンジを加え、オリジナルのリゾットにして出したところ評判に。以来、お客さんに長く愛される味となっています。

旬には手をかけすぎない

ワインに合うディナーのデリ盛り合わせ。紫芋のコロッケ&ピーマンソースや根菜のサラダ&いちごとトマトのソースなど、ワクワクするほどカラフル。

「うちで食事をした後は体が軽くなるとか、お通じが良くなると喜ばれているお客様の声を聞くとうれしくなります。まかないを食べているアルバイトの子も、体調がどんどん変わって元気になっています。まだ働けると無理をして、逆に体を壊しちゃうんじゃないかってこっちが心配してしまうくらい(笑)」。

重ね煮のように、調理法一つで食材のエネルギーや魅力は倍増し、体に与える影響も変わるという事実を横田さんは自分の目で確かめてきました。だからこそ作り手として頑なに守り続けていることがあります。素材の魅力を損ねると言われているアルミ製やテフロン加工の調理器具、電子レンジは使わないのがセオリー。同じ食材であっても季節に応じて体が喜ぶ調理法に変え、食べる人への思いやりを忘れません。

横田さんによれば、夏は体がこもった熱を外に放出しようとするので、トマトやキュウリなどの水分の多い野菜を、時折生で取り入れ体を緩ませて正解。「日々の食卓には、野菜を塩で軽くもんで浅漬けやマリネにし、火を通さないで食べることがおすすめです」。また火を通す調理のときは「短時間でさっと」がコツだそう。一方、冬は寒さに負けないよう体が熱を貯め込もうとします。そのため、ニンジンなどのぎゅっと身の詰まった野菜を鍋の中でじっくり火を通すなどして、しっかりと熱の入ったものを食べるのが好ましいのだそうです。「同じ食材を同じ方法でばかり食べていると体がなまってきます。秋になるとちょっとクリーミーなものが欲しくなったりしますよね。季節ごとに体がおいしいと感じる食べ方は理にかなっていると思うんです」。

旬の食材を手を加えすぎることなく食べることこそ、自然のままのおいしさを楽しむことの本質です。

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