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鮮魚店が多い理由とは

鮮魚を扱うお店は約40店舗あるそうです。

新店が参入したり、既存の店が商売替えをしたりと、目まぐるしく変わる市場内。そのなかで鮮魚店の数の多さだけは昔も今も変わりません。現在も全体の4分の1にあたる40店ほどが看板を掲げ、鮭、マグロ、フグなどを扱う専門店も目立ちます。ではなぜ、黒門市場に鮮魚店が集うようになったのでしょうか。その理由を、新巻鮭・数の子を専門に取り扱う「北庄」の店主・北口雅士さんが教えてくれました。

「昔は中央市場から仕入れてきたもの以外に、泉州や伊勢あたりの良い漁場から直接黒門まで魚を運んでいました。各店の店主に実家はどこかと聞いてみたら、やっぱり泉州、伊勢あたりが多い。こうした優れた産地の人たちが集まって商売を始めたことが黒門の前身になっているので、自然と鮮魚店が多くなってしまったんです。各店がより良いものを仕入れようと努力を惜しまなかったことも、今日の市場発展の基礎になっていると思います」。

得意先には特別感と安心感を

魚介の中でもマグロやエビなどの赤い食べ物は中国では縁起が良いらしく、よく売れています。

ところが、外国人観光客の要望に応えるべく、ほとんどの鮮魚店は商品を一変。旬の魚が目を輝かせていた場所には、殻付きのカキやウニが山盛り状態。串に刺したホタテやエビもズラリと並んでいます。マグロ専門店のショーケースは、一面トロや赤身の握りずし。中国や香港などアジア圏の富裕層には高いものほど売れるというのだから、店側がなびくのも仕方のないことかもしれません。

しかしこれでは、長年贔屓にしてくれていた得意先がいい顔をするわけがありません。取引を辞めてしまうところも出てくるのでは?「いえいえ、どの店もお得意さんとはずっと変わらない良好な関係を築いてますよ。今は魚を店頭に並べていても鮮度が落ちるだけなんで、どこもわざと置いていないだけ。実はお得意さん用に喜んでもらえるものをしっかりと仕入れているんですよ」。お得意さんの顔が見えると「まいど! 今日はこんなん入ってまっせ」と、奥の冷蔵庫からさっと出してくるのが今流の商売のやり方なんだそう。以前よりも顧客の特別感や満足度を高め、食の安心・安全にもつながっているといいます。

昔ながらの商売を守る店も

すっかり変貌を遂げた黒門市場ですが、すべての商店が外国人観光客に傾いたわけではありません。外国人には一切目を向けず、日本人のお客さんを大事にし、昔ながらの黒門の商売を頑なに守っている店も少なからずあります。その中から数軒を山本さんに案内してもらい、店の方々に商売に対する思いを聞いてみました。

〔近藤商店〕
「手づくりの惣菜屋をやってきて今で3代目。昔ながらの素朴な味付けを好んでもらってます。毎日数十種類出すけど、夕方近くになるとショーケースはほとんど空っぽ状態やね。うちはずっと昔からのお客さんやご近所の主婦層を大事にしてきたから、これからもこのままでやっていくつもり。外国人にお惣菜を売ってみてもねぇ」

〔魚平〕
「うちは黒門の中では新しいほうの店。実は一時期、周りの鮮魚店と同じように外国人向けのウニやらを並べてみたけど、あるとき年配の常連のお客さんが、外国人の立って食べている姿に眉をひそめるのを見て辞めました。日本人のお客さん中心でやっていくほうがうちには合っている気がするしね」

〔黒門丸一〕
「もう60年くらいここで商売をやってるけど、ずっと一般のお客さん一本。今後も変わることはないねぇ。質の良い魚を仕入れてさばいて、奥さん方が家で調理しやすいように売るのがうちのやり方。特に人気は味噌漬けかな。聞かれたら魚のおいしい食べ方も教えてますよ」

このほか、マグロ専門店の「魚丸」やなにわの伝統野菜をお惣菜にして販売する「招福庵」も、あえて外国人観光客主体の商売はしないスタイルを貫いていました。

昔ながらの商いやお客さんとの関係を大事にしながらも、時代の流れに沿って進化を続ける黒門市場。多くの外国人が今魅力と感じる日本のスポットは、日本人にも新たな刺激を与えてくれるはず。年末は買い物がてら、にぎわいを体感しに出かけてみるのもいいかもしれませんね。

(2016年10月 取材・文 岸本 恭児)

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