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再ブレーク中の「柿渋」

柿渋を利用した柿渋染め。絹、ウール、ナイロンは染めやすく、綿、麻、ポリエステルは染まりにくい。

渋柿の渋味のもとは柿タンニンです。タンニンはポリフェノールの一種で、緑茶やワイン、コーヒーにも含まれていますが、柿タンニンは別格。非常に濃度が高く、秘められた力も他より群を抜いています。 

柿タンニンのすごさを実感できるのが柿渋です。柿渋は熟す前の若い柿の実を搾り、その抽出液を発酵・熟成させたもの。柿タンニンをたっぷり含んだ赤褐色の液体は、布を染めるのに使ったり、漁業用の網に塗ったりと、昔は人々の生活に欠かせない必需品でした。柿渋を使った毒流し漁法と呼ばれるものまであったそうです。このようにさまざまな場面で利用されてきた柿渋ですが、時代の流れとともに一時は姿を潜めていました。ところが近年、人気を再燃。柿渋(柿タンニン)を添加した商品が次々に発売され、ひそかに注目を集めています。

柿タンニンを医療にも応用

伝統的な柿渋づくりは果実を潰して発酵・熟成させるだけなので、昔は家庭でもよくつくられていました。

柿タンニンには防水や防虫、防腐効果があることがわかっていましたが、近年の研究によりさらなる優れたパワーが解明されてきました。まず一つは消臭効果です。加齢臭をはじめとする悪臭に対して有効とされ、柿渋を配合したせっけんは体臭を消すと話題に。食の分野では柿タンニン入りのラーメンも登場。小麦粉のタンパク質と結合して固まる性質が麺のコシを強くします。

柿タンニンの実力には医学会からも熱い視線が送られています。なかでも注目したい最新のトピックスは、ウイルスに対する効果を検証した広島大学の研究です。柿タンニンをインフルエンザやヘルペスといったさまざまなウイルスに試してみたところ、活動を抑制させることがわかりました。しかも、ウイルスによって効果にばらつきがあるわけではなく、テストをしたどのウイルスに対しても良好な結果を導き出しています。特筆すべきは、ワクチンや感染を防ぐ方法がないと言われていたノロウイルスにも極めて強い効果を示したこと。この画期的な発見は、医療現場への1日も早い応用が待ち望まれるところです。また、アンチエイジング、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の改善にも有効なのではとの見方があり、研究が進められています。

日本における柿のルーツ

抽出した柿タンニンの液は赤褐色。果実1kgに対してできる柿渋は約2L。保湿効果があり、手がすべすべになるそう

日本での柿の歴史はかなり古くから始まったと言われています。しかし明確な記録が残っておらず、具体的な年代については曖昧。縄文時代や弥生時代の遺跡から柿の種が発見されているため、このころには日本に渡っていたという説や、大陸との交流が盛んだった飛鳥時代にはすでに日本にあったという説など、憶測はさまざまです。文献から紐解くと、確かな足跡は奈良時代。当時の事柄を記した『正倉院文書』には、干し柿の商いを行っている記録が残っているので、この頃の人々の間にはすでに柿を好んで食べる習慣があったのでしょう。

日本に柿の存在や食べ方を伝えたとされるのは中国です。南方の植物だった柿が中国に 伝わり、唐の時代に入ると庶民の間に甘味として広がって食用として認知されていきます。日本でも砂糖がない時代、柿の甘さはたいへん貴重でした。江戸時代には品種も増え、柿の栽培が盛んに行われるようになります。飢饉にも強いことがわかると、当時の農業書では柿の木を植えることを推奨しました。

【コラム】日本語がそのまま学名に

18世紀 に日本にやってきたスウェーデンの博物学者により 「Diospyros kaki(ディオスピロス・カキ)」という学名で呼ばれるようになりました。学名に日本語がつくのは非常に珍しいことで、海外のレストランなどではkakiと書かれているのを目にすることがあります。ちなみにDiospyrosは神の食べ物という意味。神社仏閣に柿の木が植わっている様子を見たその博物学者には、柿は神聖なものと映ったのかもしれません。

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