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三重は知られざる銘酒どころ

巣箱の中と外を慌ただしく出入りするミツバチたち。午後からは気温が上昇し、活動もより活発に。

サミットが日本で開催されると、乾杯酒や食中酒に選ばれる日本酒についても話題が集まります。あまり知られていないことかもしれませんが、三重県は酒どころ。伊勢志摩サミットでは外務省関係者が1本1本テイスティングを重ね、県内の酒蔵で仕込まれた銘酒がテーブルを彩りました。芳醇な味と香りが首脳たちを気持ちよく酔わせたことでしょう。26日のワーキングランチで乾杯酒となった「作(ざく)智 純米大吟醸 滴取り」(清水清三郎商店・鈴鹿市)は、希少価値の高い1本として日本酒好きの間で知られています。こうしたレア物が選ばれた一方で、「瀧自慢 辛口純米 滝水流」(瀧自慢酒造・名張市)のような県民にもおなじみの庶民的な日本酒も宴を盛り上げました。また、ワーキングランチの食中酒として振る舞われたのは「酒屋八兵衛 山廃純米酒 伊勢錦」(元坂酒造・多気郡)。この醸造米である伊勢錦は、幻の酒米とも呼ばれている希少種です。

伊勢には幕末から明治にかけて「伊勢の三稲」と称された新品種が栽培されていました。その1つが伊勢錦。多くの人でにぎわうお伊勢参りの街道は、昔は人々の交流の場でもあり、農家の間では米の新品種や農作技術について情報交流が盛んに行われていました。参宮街道の頒布所では伊勢錦が無料配布され、全国各地に広まっていきました。「男は一生に一度は」と言われたお伊勢参りは、日本の農業の発展にも大きく寄与していたのです。

地元人の愛する伝統食

希少なハチミツは、喫茶かんび横の店頭で購入することもできます。

三重県には多種多彩な伝統食が今に伝わっています。伊勢神宮の参拝客らに人気の伊勢うどん。これは農民が味噌を作る過程でたまたまできたたまりをうどんにかけたのが原型と言われています。その後だしにカツオ節を使ったりみりんを加えるなど工夫が施され、今の味になりました。太くやわらかな麺にくっきりと濃いめのだしが絡まった1杯は、昔も今も変わらず旅人たちのごちそうです。志摩地方の海の男たちのエネルギーとなったのは手こねずし。新鮮なカツオやマグロなどの魚を醤油ベースの調味液に漬け置き、青じそなどと一緒にすし飯にこねるように混ぜて作ります。手こねずしはもともと船上で手早く作れて保存がきくようにと考えられた漁師料理。今では祝いの席に並ぶ料理の一つです。また三重の家庭ではどの地方でも昔から野菜の煮ものがよく食べられてきました。これは穏やかな気候が恵まれ年中野菜が収穫できたことと、伊勢湾や熊野灘で豊富に獲れた小魚やカツオ節などだしの材料が安く手軽に手に入ったためだとか。

自然や歴史の影響を受け、豊かな食文化を育んできた三重県。伊勢志摩サミットは改めて、私たちに日本の食のすばらしさを教えてくれたのではないでしょうか。

(2016年5月 取材・文 岸本 恭児)

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