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かぶせ茶づくりの条件と苦労

玉露や碾茶は品質を守るため今も手摘みで行われます。熟練された技術と根気のいる作業です。

水沢がかぶせ茶の産地として発展してきたのにはいくつかの理由があります。まず一つに茶葉の生育に適した気候に恵まれているということ。「比較的雨が多く、一年を通して温暖なことは茶葉にとって非常に大事です。さらに昼夜の気温差があり、適度に霧がかかる環境が良好な生育を促しています」と小池さん。もう一つは山間部ならではの地形にあります。「お茶は乾燥に弱く、ほどほどに水分がないと枯れてしまいます。この辺りの土壌は礫(れき)と呼ばれ砂利を含んでいるので、水はけが抜群に良く水持ちも適度に良いんです。また、山裾に茶畑があることで日没は早め。茶畑に長い時間サンサンと太陽が当たると、茶葉に苦みが出てしまうためあまり好ましくありません」。

こうした自然条件が重なり、水沢は上質なかぶせ茶の産地となりました。一方でかぶせ茶は栽培にかなりの手間とコストがかかってしまうのが農家にとって頭の痛いところ。覆いをかぶせたり外したりする作業は機械では行えず、必ず人手が必要で、特に茶葉を刈り取る際は慎重さを要します。わずかな時間でも茶葉を日光に当ててしまうと、かぶせ茶特有の味わいが半減するので、収穫期間中は覆いを取ってすぐに刈り取るという作業を広大な茶畑の中で繰り返さなければなりません。昔は狭い畝でも小回りの利く農家の子どもたちが手伝っていましたが、時代が変わり、今は近所の人の手を借りたり、特別に人を雇うところもあります。手間ひまをかけても少量しか製造できないため、静岡県などの大産地はかぶせ茶づくりを敬遠。中規模産地である三重県が生産適地となったわけです。

店頭にお茶が並ぶまで

四日市市茶業振興センターの敷地内にある製茶工場。この日は新茶のシーズン真っ只中ということもあり、工場内は大忙し。

四日市市茶業振興センターはお茶について学ぶことができる施設です。施設内にある製茶工場は事前に予約すれば見学が可能ということで、小池さんに案内していただきました。工場の中はお茶の清々しい香りでいっぱい。心を落ち着かせてくれます。

集めた茶葉はまず蒸気で蒸し、冷却して鮮やかな緑色を残します。「蒸し」は飲んだ時の味や色を決める重要な工程の一つ。また加工時の茶葉の温度も重要で、常に35℃に保たれています。「35℃は茶葉が本来持っている栄養素を壊さないために設定された温度。お茶の仕上がりにも大きくかかわってきます」。その後、茶葉に含まれた余分な水分を蒸発させ、葉をもんだり熱風で乾かしたりを繰り返し、流通する前段階の荒茶にしていきます。荒茶が出来上がると一旦冷蔵庫で保存。出荷する際には荒茶に火入れをして選別を行い、製品の均一化をはかってから全国へと配送されます。お茶には米のように定められた等級はなく、価格を決めるのは茶商。味や香りを確かめて適正価格を設定します。

こうして製造される三重県産のかぶせ茶は、毎年5月中旬ごろから新茶として店頭に並びます。新茶の初々しい味を好む人は多いですが、小池さんがおすすめする飲みごろは11月や12月あたりに並ぶ商品。「かぶせ茶や玉露、碾茶は新茶で飲むよりちょっと時間を置くほうが、味が落ち着いてまろやかになります。ぜひそちらも楽しんでみてください」。

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