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茶畑に黒い覆いをする理由

水沢に着くと辺り一面が茶畑。美しく整ったかまぼこ状の畝がずっと先まで続いています。

四日市の市街から山に向かってしばらく車を走らせると、視界一面に緑が広がる茶畑が見えてきます。ここは伊勢茶づくりの中心地域である水沢。全国屈指のかぶせ茶の産地として知られています。童謡『茶摘』の歌い出しに「夏も近づく八十八夜~」とあるように、立春から数えて88日目ごろにあたる5月初旬は新茶の摘み取りの最盛期。水沢の新茶のシーズンは10日間ほどとわずかなため、茶農家は天気を読みながら毎日作業に追われます。かぶせ茶は渋みが少なく、うま味と苦みのバランスが整った緑茶。玉露に近い風味が特徴です。その栽培方法は独特で、畝(うね)に一定期間黒い覆いをかぶせ、直射日光をさえぎって新芽を育てます。「覆いをすることで、茶葉に本来含まれているアミノ酸の一種であるテアニンが光合成によってカテキンに変化するのを抑えることができます。テアニンの効果でうま味のあるまろやかなかぶせ茶が生まれるんですよ」。そう話すのは、この日案内役を務めてくださった四日市市茶業振興センターの小池さんです。 

かぶせ茶の生育に用いられているこの栽培方法は被覆栽培と呼ばれるもの。玉露や抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)の栽培もこの方法で行われています。煎茶など覆いをせずに育てた茶葉を原料にしたものを露地茶と呼ぶのに対し、かぶせ茶、玉露、碾茶は覆い茶という茶種に分類されます。産地の気候によって覆いをする期間は異なりますが、三重県のかぶせ茶はだいたい15日間となっています。

【豆知識】三重県産の緑茶の種類と特徴

・煎茶……もっとも親しまれている一般的な緑茶。渋みのなかにまろやかなうま味を備えています。
・深蒸し煎茶……製造過程で煎茶よりも長い時間蒸したお茶のこと。濃厚な味が特徴です。
・覆い茶(玉露・かぶせ茶・碾茶)……渋みが少なくうま味が強いお茶。覆いをして茶葉を生育させる
 ことにより、覆い香と呼ばれる独特な香りも生まれます。

環境に強いお茶の木

茶葉を刈り取る機械。人の手なら延々とかかる作業があっという間に終わります。この日はあいにくの雨で作業は中止に。

お茶の木は多年生の植物でゆっくりと成長し、一人前に育つまでには最低4年ほどかかります。茶園として十分な収穫が見込めるようになるには5~8年は必要ですが、一度植えると30~40年は持つ耐久性の高さが生産者にとっては魅力です。台風や大雨などの自然災害に強く、畑が害獣に襲われることもありません。肥料は有機物が主で、有機物で足りない場合は化学肥料を補います。害虫に対しては必要最低限の農薬を散布することで品質を保持。特に新茶は害虫が発生するシーズンを前に収穫を終えてしまうため、低農薬での栽培が可能です。このような点から、お茶は体にも環境にもやさしい農産物と言えます。

現在、全国で年間に約8万tのお茶が収穫されています。静岡県をはじめとする一部の産地では茶畑が年々減り、収穫量も減少傾向にありますが、三重県ではここ数年大きな変動はなく、若い就農者も多いと言います。その理由を小池さんはこう見ています。「明確なことはわかりませんが、他の農産物と比べると台風や水害などの被害をあまり受けないので、農家としては余計な気苦労がいらないのが良いのかもしれません。また、お茶は年間3回ほど刈り取りができ、毎年一定の収穫量が見込めます。収入面で安定していることも大きいのかもしれませんね」。

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