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ミツバチ周辺の環境の変化

巣箱の中と外を慌ただしく出入りするミツバチたち。午後からは気温が上昇し、活動もより活発に。

長年、移動養蜂家をやってきた稲田さん親子が最近危惧していること。それはミツバチの周辺に起こっている環境の変化です。「これまで北海道にはほとんどいなかったスズメバチが北上してきて、気温の上昇とともに増えています。ミツバチにとってスズメバチは天敵。駆除機をつけないとあっという間にやられてしまいます。急速に勢力を拡大しているツマアカスズメバチも脅威。今は九州で勢力をとどめてはいますが、今後どうなるかわかりません。スズメバチは繁殖力が高いのでその分えさが必要。ミツバチはそのターゲットになってしまうんです」。さらに、原因が定かではない伝染病も広がりをみせています。一節には農薬の影響を受けているのではないか、またダニが媒介しているのではないかとも言われており、ミツバチを守るためにはさまざまな対策が必要となってきました。

一方で花にも異変が起こっています。日本の気候に寒暖差がなくなってきていているせいで四季がはっきりしなくなり、北海道でのアカシアの開花時期がどんどんと早まっています。昔から人気のレンゲハチミツも、田畑が減って自生するレンゲの花が激減したことで、だんだんと採れなくなってきているそうです。稲田さんが巣箱を置いている畜産団地ではソーラーパネルの設置が急速に進み、自然を踏み荒らしています。昨年まであったアカシアの木も何本か切られてしまったと、稲田さんは残念そうに山を見つめました。

「まぜもんはしない」という家訓

希少なハチミツは、喫茶かんび横の店頭で購入することもできます。

最近は健康志向の人が増えてハチミツへの関心が高まり、市場にも動きが出てきました。昔と大きく違うのは、味や香りのバリエーションが格段に増えたこと。買い手側は選ぶ楽しみが広がりました。街中にはハチミツ専門店がみられるようになり、ハチミツ専用の棚を設けるスーパーもあります。アルゼンチンやカナダなど、温帯や亜寒帯地方を中心に、世界中でつくられているハチミツ。生産量のトップは中国で、他国に比べると群を抜いています。日本にも中国産のハチミツが年間3万トン以上輸入されており、日本での流通量の約8割を占めるほど。国内で採れるハチミツの量には限りがあるため、高まるニーズに応えるには輸入に頼らざるを得ないのが現状です。また、日本におけるハチミツの商品表示は明確ではなく、なかには輸入した安価なハチミツと国産のハチミツを混ぜて販売してところも。このような行為は業界全体の信用を下げることにもなりかねません。

茨木養蜂園では、「まぜもんはしない」というのが先祖代々引き継がれてきた家訓。質を下げてまで売り上げに執着しないという教えを、稲田さんも守っています。「うちは昔から1年かけて採った分を小売りしています。大々的に売ることができればもっと利益も上がるとは思いますが、そんなに量は採れないですし、大手に売ってしまうと商品はすぐになくなってしまいます。なくなった分は他から補充してこないといけなくなるでしょう。自家採取以外のハチミツを売ることは家訓に背くこと。じゃあ単純にミツバチの量を増やせば採れる量も増えるんじゃないかと思われるかもしれませんが、増えた分だけミツバチの手入れが行き届かなくなります」。自分たちのできる範囲でお客さんにうそのない商売をすることが稲田さんのポリシー。作り手たちのまっすぐな思いと、ビンに詰まった透き通るような味わいこそ、茨木養蜂園のハチミツが長く愛されてきた所以です。

(2016年4月 取材・文 岸本 恭児)

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