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門外不出の製造方法

種麹のもととなる原料米。菱六では玄米を3%精米したものを使っています。

種麹づくりは昔から特殊な技術を必要とし、秘伝とされてきました。業界に15年身を置く助野さんですら、他の種麹屋ではどのような道具と方法で仕込んでいるのか、一度も見たことや聞いたことがないと言います。

菱六で種麹づくりに携わっているのは7人の職人たち。独自の製造方法は口伝で継承されてきました。種麹の原料となるのは玄米をほんのわずかに精米したもの。それを丁寧に洗米し、水分を吸収させてから蒸し器の中へ入れて蒸していきます。蒸し上ったら冷まして原菌を振りかけ、湿気のコントロールに優れた杉の麹ブタに入れて麹室へ。麹室の中では1週間静かに寝かせ、自然の力を借りて菌を培養していきます。種麹づくりで助野さんが最も気を遣うというのが、培養中の温度と湿度の管理。麹菌には好む環境があり、ストーブの熱や麹ブタの場所を入れ替えることで微調節しながら一定に保たなければなりません。少しでも管理を怠るとうまく胞子が形成されず、すべての作業が無駄になってしまいます。麹室の中の湿度は100度近くにまで上がり「まるでお風呂場のような状態。麹菌にとっては快適でも中で作業をする職人には過酷でしかなく、暑い時期はかなりの重労働なんです」と助野さんは苦笑い。「麹菌は生き物。環境を整えていかに機嫌よく育ってもらうかが私たちの大きな役割です。湿気が多かったり少なかったり、わずかな差が大きく出来を左右するので、最後まで気は抜けません」。近年はますます激しくなってきている日本の気候変動が種麹づくりの新たな壁。職人にとっては環境が読みづらく、作業もやりにくくなってきているのだそうです。

こうしてミクロの世界に手間と愛情を注いでつくられた麹菌は鮮度が命。フレッシュなうちにパッケージされ、北は北海道、南は沖縄へと配送されています。

目に見えない神聖なもの

仕込みの道具の中でも重要な役割を果たす麹ブタ。菱六で使われているのは吸湿性に優れた杉の木でできたもの。

1年で種麹づくりが最も忙しくなるのは10月から2月にかけて。この間は日本酒や味噌など麹が原材料となる食品が集中して作られるため、時期を重ねて種麹の注文や出荷もピークを迎えます。目まぐるしい日々も春に入るとひと段落。暑い夏は仕込みに向かないため、菱六は休業に入ります。梅雨にあたる6月3週目から盆が明けるころまでは道具の手入れが職人たちの大事な仕事。殺菌を念入りに行い、次のシーズンに備えます。種麹づくりに使う道具は、今では手に入りにくいものや代えがきかないものもあり貴重。仕込みの技と同様、道具にも脈々と続く職人たちの思いが受け継がれているのです。

シーズンオフには、毎年欠かすことのできない菱六の恒例行事も行われます。それは酒の神様が祀られている松尾大社への参拝。「神様に今年も無事仕込みを終えたお礼と、来年も私たちの仕事を見守ってもらえるようお願いにあがるんです。種麹はとても繊細でその働きは目に見ることができない神聖なもの。だからこそ、質の良いものに仕上がるかどうか、結局最後は神頼みになるんですよ」。

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