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日々研究創造で新たな味にも挑戦

ロングヒット商品「にんにく醤油」をはじめ、醤油をベースにしたバリエーション豊かな調味料がそろいます。

醤油職人として腕を磨きながら、銀行員時代に培った営業力もいかんなく発揮した鷹取さん。飲食店へと販路を広げ、オーダーがあればドレッシングや麺つゆといったこれまでつくったことのない味にも一生懸命に取り組みました。1つの商品を生み出すまでに数えきれないほどの試作を繰り返し、たとえボツになったとしても、その過程で蓄積されたレシピは鷹取醤油の財産になるというのが鷹取さんの考え方。「おかげさまで、今となっては膨大なレシピをちょっとアレンジすれば、すぐにオーダーどおりの味を提供できるようになりました。これはうちの強みやね」。

新しい味の研究に試行錯誤を重ねるなかで、ロングヒットとなる商品「にんにく醤油」が生まれます。風味の豊かな青森県産の福知ホワイト六片種を使い、あえてすらずに生のまま、無添加の醤油に2ヵ月間漬け込むことで引き出された深いコクと濃厚な香りが特徴。チャーハンやカレーライスの隠し味、から揚げの下味にも使えて重宝すると、お客さんたちの間でたちまち話題となりました。「お客さんの声に応えて、ほしいと思う商品を丁寧に正しくつくることがやっぱり大事やね」と鷹取さん。こうして商品はどんどんと増え、現在では業務用も含めると270アイテムを数えるまでになりました。

「ちょっと甘めでさらり」が岡山の味

直売店「燕来庵」自慢のくつろぎスペース。あまりの居心地の良さに何時間も腰を据えるお客さんもいるそう。2階のキッチンスペースでは、手作りドレッシングの教室を開催し人気を得ています。

地域ごとに味が異なる醤油。食文化の違いや醸造法によって個性が細かく分かれています。日本で生産される醤油の大多数を占めているのが濃口醤油。甘味・塩味・旨みのバランスの取れたふくよかな味わいは万人に受け、和食の奥行きを限りなく広げてくれます。旨みを好む関西ではだしの風味を引き立てる薄口醤油が生まれ、愛知県では琥珀色で独特の風味を持つ白醤油がメジャー。山口県には香りや味が濃厚な甘露醤油があり、九州地方ではしっかりと甘みの強い醤油が一般的です。 岡山県で好まれるのはどんな醤油なのでしょう。「岡山の人は瀬戸内で獲れる淡泊な魚に合う、ほんのり甘くまろやかでさらっとした醤油が好きなんよね」と鷹取さん。伝統的な製法でつくる濃口醤油は現在5種類ありますが、なかでも「桐(きり)」はそんな地元の人の好みに合わせ、旨みと甘みのしっかりとした仕上がり。鷹取醤油を代表する自慢の味です。まろやかさを出すのに欠かせないのが鹿児島県喜界島産の粗糖と兵庫県赤穂産の塩。厳選した素材がタンクの中で静かに調和しながら熟成し、極上の醤油へと育っていくのです。

お客さんに喜んでもらえるのがええ仕事

醤油やポン酢をアイスクリームにアレンジした商品も販売。店頭で購入できるしょうゆソフトクリームは大人気。

「お客さんにうそのない商品にしよう」「徹底して商品を研究しよう」「地域に貢献しよう」「両親や友人は大事にしよう」。鷹取さんはいつもこの言葉を社員一人一人に投げかけています。それは、まっすぐな心にこそクオリティの高い商品を生み出す根っこが宿ると信じているから。人への感謝や人を思いやる気持ちの上に数字がついてくると鷹取さんは言います。 昨年、工場の横にあった古民家を買い取り、直売店と憩いの場を兼ねた「燕来庵」をオープンさせました。燕来庵は、わざわざ醤油を買いに来てくれたお客さんたちがゆっくりくつろぐスペースがなく、心苦しく思っていた鷹取さんの念願。イスやテーブルも設けられ、木のぬくもりを感じる落ち着いた空間になっています。毎日スタッフが心を込めて手作りする試食もたっぷりスタンバイ。鷹取さんは「お茶を飲みながらおしゃべりしたり、オリジナルのしょうゆソフトクリームを食べたり。お客さんが長居してもらえることがうれしいんよ」と笑顔があふれます。 味は素材の良さや値段だけで図るものではなく「どこで買ったか、誰から買ったかを思い出しながら食べるものっておいしい。シチュエーションや人の心が味につながるんやね」。鷹取醤油が愛されてきた理由がこの言葉に詰まっています。

(2016年1月 取材・文 岸本 恭児)

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