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白味噌が京都で愛された理由

京都御所に味噌を納める際に必要だった入門証や納品元帳、代金として拝領した銀を測る天秤測。

京都では白味噌は特別な味という意識が今なお根強いものの、日々の食卓にもしばしば登場させ、四季に合わせて食してきました。春は筍の木の芽和えに、夏はタコをさっぱりと酢味噌で、秋はナスに乗せて田楽に、冬はしっとり炊き上げた風呂吹き大根に添えて。なぜこれほどまで白味噌が京都の人々に愛されてきたのでしょうか。

栄養価に優れた味噌は、昔は重要なエネルギー食。長期保存もできたため、特に武士にとっては長い戦を乗り切るために不可欠な食材でした。歴史を彩った戦国武将たちにも味噌は絶対的な兵糧。武田信玄、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗など名将たちは皆、味噌づくりを奨励しています。片や都として栄えた京都には、物資が豊富に流入し、味噌の原料にも困ることはありませんでした。労働者階級が少なく公家文化が繁栄していたこともあり、エネルギー源として食べるしょっぱい味噌より、米をたくさん使った贅沢で甘い白味噌のほうが好まれたのでしょう。宮中のハレの儀式に珍重され、甘味の代用にも使われたりと、白味噌は「嗜好品」として広がりを見せます。そしていつしか庶民にも浸透。京都の雅な食文化とともに発展していきました。

上手に取り入れ減塩食

外国人にも人気の調味味噌。西京白味噌をベースにしてあり、料理や食材に応じて使い分けるのもおもしろいですね。

ここで白味噌の栄養価にも注目してみましょう。昔から「みそは医者いらず」と言われるほど、健康増進に優れた食材であることはすでに周知の事実。科学的にも実証されています。しかし気になるのは塩分。普通の味噌は11~13%が平均なのに対し、白味噌は5%と低塩です。減塩を心がけている人にはおすすめの食材と言えるでしょう。味噌汁を毎日飲むなら、いつもの味噌を少し減らして代わりに白味噌をプラスするだけでも身体にやさしく、コクや風味にも変化が生まれ、食べる楽しみが広がりそうです。

海の向こうでも今ヘルシーな味噌にスポットが当たっています。店を訪れる外国人観光客には『酢みそ』や『柚みそ』など味付けされた味噌が人気。野菜のディップにしたりムニエルに合わせたりするらしく、概念を覆す斬新な料理は外国人ならではです。また本田味噌本店では白味噌の新たな可能性を求めて、さまざまなレシピをホームページ上で発信しています。

ベーシックな和食だけでなく、洋食へのアレンジも幅広く、なんとエッグベネディクトのソースにまで白味噌が登場。「レシピは料理学校の先生にお任せしていますが、白味噌は味が決まりやすいと言ってくださいます。調理の最後はだいたい塩コショウで味を整えるらしいのですが、白味噌を使うと自分の目指した味にぴたりとたどり着くので塩コショウは必要ないと。コクもプラスされるので、味に深みが出る点も高く評価していただいています」。健康面、調理面ともに優秀な白味噌をもっと積極的に取り入れたいものですね。

おいしい京雑煮はだしいらず

最後に、今回一番聞きたかったことを。白味噌仕立ての京雑煮を家で最もおいしくいただく調理のコツは何ですか。「もしかして、かつおや昆布で丁寧にだしを取っていませんか」と尾崎さん。ええもちろん。白味噌の芳醇な旨みに負けないようなだしを毎回準備していますが……。「それ、実は必要ないんですよ」。えっ、本当ですか! 家庭によって味わい方はさまざまあるものの、尾崎さんがお客さんに勧めているのは、お湯の中に直接白味噌を溶く方法。分量は1人前40g程度を目安にたっぷり使うのがコツ。「普通の味噌は1人前約20gなんですが、白味噌の場合はちょっととろみをもたせるくらいが本来の風味を楽しめると思います。よく水臭いとおっしゃるお客様がいらっしゃいますが、味噌が足りていないことをお伝えすると大抵驚かれますね」。かつおだしを使うと、かつおの香りや塩分が白味噌の甘さやコクのじゃまになってしまうのだとか。もしどうしてもだしが必要なら、昆布だしの薄いものを。具材は別炊きにし、餅と一緒に椀に盛ればすっきりと上品な京雑煮が家でも気軽に食べられます。お湯でいいなら手間いらず。ぜひお試しあれ。

(2015年11月 取材・文 岸本 恭児)

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