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手間をかけて味を磨く

三十三間堂の近くにある本店。接客したり商品を並べたり配送したりと、店は家族総出で切り盛りしています。

赤尾屋の漬物は合成保存料や合成着色料は使用せず、ナチュラルな色や風味が持ち味。丹精を込めて少しずつ手仕込みする技術は、親から子、孫へと一子相伝で受け継がれてきました。作業場を取り仕切るのは、智史さんの父と兄。忙しい時は智史さんもサポートします。大根の皮むきからみじん切りまですべて手作業で行うのが、創業以来貫いてきたスタイル。香りを添えるゆずは、皮の裏にある苦みの出やすい白い部分をきれいに取り除き、黄色い部分だけをみじん切りする手間を惜しみません。

また漬物づくりは「下漬け」と呼ばれる塩漬けの後、漬け替えを1度行うところが多いなか、こちらでは2度も漬け替えをしています。このひと工程を加えることで、野菜の持つ水分が十分に出切って旨みが引き出されたり、調味液が浸み込みやすくなり、味の変化を防ぐことにもつながっているのだとか。「2度の漬け替えでゆっくりと時間をかけて塩度を抜いていくことで、おいしい漬物に生まれ変わります」。さらに、塩漬けの際の塩分濃度をあえて高めに設定していることにも理由がありました。「季節や野菜によって違ったりしますが、うちでは塩漬けの塩度を7~8%にしています。塩度を高めることは、野菜に潜む雑菌を死滅させる効果もあるんです」。このように手をかけることによって、漬物独特の食感や芳香が出てくるのだそう。

漬物づくりにおいて決して妥協はしたくないと智史さん。品質を落してまで看板を掲げるほど恥ずかしいことはないという言葉に、老舗のプライドが滲みます。

冬の味「千枚漬」を仕込む

店の奥にある作業場。仕事を終えた道具はきれいに整頓され、また明日の仕込みの時を待ちます。

京の三大漬物として挙げられる、千枚漬、すぐき漬、しば漬。この3つは「京もの伝統食品」の指定を受けており、京漬物の代表選手です。京都府漬物協同組合では伝統の技と味、品質を守るため、千枚漬は聖護院かぶら、すぐきはすぐきかぶらを原料としなければならないことなど、あえていくつかの基準を設けています。色、味、食感の違いは店ごとに比べてみると歴然。個性が際立ちます。なかでも千枚漬は、樽出しの日を心待ちにするファンが多い冬ならではの味覚。赤尾屋では数年前から、その仕込みを智史さんが1人で担うようになりました。寒さの深まりとともに身を締め、甘くみずみずしい聖護院かぶら。収穫のシーズンを迎えると、智史さんの忙しさにも徐々に拍車がかかってきます。多い時は1日100玉ほど皮をむき、ヘタを落す作業を朝から晩まで黙々と続けるそうです。

漬け込みに欠かせない重石は、手入れがしやすいステンレス製。重石の加減で味も変化するのだとか。

千枚漬づくりの難しさは、まずかぶらの選別にあります。仕入れたものがすべて使えるわけではなく、一玉ずつ手と目で質を確かめて、千枚漬に適したものだけを選り分けていくのです。「聖護院かぶらは9月の半ばから下旬くらいに農家さんが畑に種をまいて育てていきます。この時期はよく台風が来るので、以前はまいた種が雨風で流されてしまってダメになってしまわないか心配しとったんですが、最近は暑さのほうが深刻。晩夏に日照りが続く環境は、かぶらの成長にとって良くありません。せっかく出た芽も枯れてしまうし、地熱が冷めないので実が水分を欲しがり、中に"す"が入ってしまうんです。そうなると漬けても味が落ちてしまうので売り物になりません」。この選別作業が最も重要で、神経を使うと言います。また、千枚漬のような旬の商品は、ロスが出ないよう売れ行きを見て仕込んでいくことも大事。「それでもロスが出てしまったときは、漬け方の研究に使わせてもらってます。そうやって地道に知識や経験値を増やしておくと、後で活きてくることもあったりするんですよ」。

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