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造り酒屋から漬物屋へ

赤尾屋秘伝の奈良漬。こっくりと深い色に染まった瓜は味がしっかりと馴染んでいます。

赤尾屋の前身は造り酒屋でした。「酒粕がたくさんあったので、そのころから粕漬を作っていたと聞いています。昔は冷蔵庫がなかったし、奈良漬やらっきょう漬、梅干しといった常温でも長期保存のできる食べ物が重宝がられていました。うちに詳しい記録が残っているわけではないので正確なことはわかりませんが、粕漬から徐々に手を広げて今の漬物屋に至っているんやと思います」。当時から作っている奈良漬は、今も根強い人気を誇る看板商品。現在は上質な酒粕を自家発酵させ、先祖伝来の漬け方でじっくりと味を育てています。深い琥珀色に染まったうりをいただいてみると、酒粕の香りが芳醇でなんとも上品。肉厚で食べ応えがあり、シャキシャキとした食感と甘さは、お酒の肴にもごはんのお供としても申し分はありません。

こちらでは奈良漬を筆頭に、季節商品も含めるとアイテム数は60~70種類にも及びます。「僕が小さい時からうちの店にはこれくらい漬物が並んでいるんが普通やったんですけど、お客さんには『ほんまに多いなぁ』とびっくりされます。味のバリエーションも他の店と比べると多いみたいで、きゅうりの浅漬けだけで3種類も仕込んでいるところは珍しいんやないですかね」。商品はお客さんの要望から生まれたものもあれば、自分たちのアイデアを形にしたものもあり、いつのまにか増えていったのだとか。

漬物に向く野菜選び

店を訪れると出される試食の数々。涼やかな色合いと豊かな味わいに手が止まらず、完食する人もいるそう。

「漬物にしたらおもしろそうと思った野菜があれば、まずはその野菜が京都に常時入荷するものかどうかを中央市場に行って聞くんです」と智史さん。産地や農家は近郊に限らず、漬物に適した品質であれば遠地の野菜も使います。「たとえば、千枚漬用の聖護院かぶらや夏の味覚である山科なすなどは京都ならではの野菜なんでね。京都産やないとあかんもんはこだわって仕入れて漬け込みしてます。でも漬物用の野菜にはそれぞれに適したサイズや質があって、白菜漬のような通年商品は、春先の暖かくなり始めたときは長崎産、夏の暑い時期は涼しい信州産のものと季節ごとに産地を移していくんです」。きゅうりも大きく育ったものは漬物には不向き。見栄えはしても種の部分が大半を占め、パリパリとした食感が損なわれ、水分が多くて水臭く感じてしまうために商品にはなりません。素材選びにも確かな目利きが必要です。

十五代目の土田智史さん。「先祖が生んできた今の味があるからこそ、お客さんに喜んでもらえます」と胸を張ります。

智史さんは概念にとらわれず、これまでさまざまな野菜を漬けてみたそう。特に印象に残っているのは、ラディッシュと小松菜。「ラディッシュは色が鮮やかで見るからに食欲をそそるやないですか。うまくいけば商品化できるなと思ってトライしてみたんですけど、漬け込むうちにどんどん色素が抜けてしもて。せっかくのきれいな赤が、何度やっても真っ白になってしまうんです。見た目がダメなんはまず売りもんにはなりません」。一方、小松菜はというと「そこそこ上手に漬かったし色も良かったけど、もし小松菜を胡麻和えにしたもんと漬物にしたもんを一緒の食卓に並べたら、僕やったら手が伸びるんは胡麻和えの方やなと思ってしまった。野菜やったら大抵は漬物にできますが、見た目や味が適さんもんも多いんやなってことを試してみて思いますね」。一筋縄ではいかない商品開発。それでも好奇心を持ってチャレンジすることを智史さんは大事にしています。

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