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ブランドを支える「手より」

作業場では女性社員たちが大きなテーブルを囲み、丹波黒と向き合って手よりの最中。

小田垣商店の黒大豆は、品質が安定して良いと全国の料亭でひいきにされ、煮豆で有名な大手食品メーカーでも採用されています。厚く信頼を寄せられるわけは、同社独自の選別方法にありました。「弊社では丹波黒と丹波大納言を取り扱っていますが、農家さんから頂いた豆をそのまま右から左へ流し、袋詰めにすることはしません。同じ土地で育った豆でも農家さんによって微妙に出来が違いますから、品質を保つためには正確に選別することが大事です」と山本さん。同社では産地から届いた豆はまず機械でふるいにかけ、粒の大きさを振り分けていきます。

そしてここからが、山本さんが「小田垣の生命線」と言う最も重要な作業。粒の大きさごとに人が一粒ずつ品質をチェックしていく「手より」に入ります。手よりとは、自社で設けた厳しい基準に従い、一粒一粒手作業で良い豆と悪い豆の分別を行うこと。作業場を訪ねると、大きなテーブル状の作業スペースに豆が山積みになっており、それを女性社員たち数名が取り囲んでひたすらに豆と向き合っていました。黒大豆専用の選別機もありますが、やはり人間の感覚のほうが頼りになると山本さんは語ります。「手よりは目と耳と手をフルに活用。目では裂皮や虫食い、変色や異物が入っていないかを確認しています」。また、耳で音を聴き、手で1粒ずつ触れることで豆中の水分量をチェック。「乾きすぎているとカラカラという音がしますし、水分が入り過ぎていると握ったときにやわらかい。微妙な感覚ですが、熟練社員なら難なくわかります」。

手よりは集中力が大切。作業台に広げられた豆を手際良く選別していきます。

素人が見ると気が遠くなるような細かい作業も、この道数十年というベテランの手にかかれば何ともスムーズ。取引先の要望によって選別の基準を変えられるのも、手よりの利点です。かつては農閑期の仕事として当たり前のように見られた光景でしたが、継承しているのは1軒だけとなりました。小田垣商店のこうした優れた選別技術が、産地の高い品質を支えているといっても過言ではなく、丹波黒のブランドを守るためになくてはならない作業なのです。

丹波産に高値が付くのは

手よりで弾かれた粗悪な豆も無駄にはせず、きな粉やみそなどの加工品に姿を変えて食卓へ。

丹波黒は、丹波篠山地方で栽培された黒大豆のことではなく品種名です。兵庫県と京都府が産地としては有名ですが、岡山県や滋賀県でも作られており、小田垣商店ではこの4大産地から仕入れています。産地によって味に大差はありませんが、市場価格は違ってきます。一番高値がつくのは兵庫県・京都府産。岡山県と滋賀県は少し価格が落ちます。それにはある理由が。

丹波黒を乾物として流通させる場合、産地表記が義務付けられています。そのときに「丹波産」と記せるのは、丹波地方にあたる兵庫県篠山市、丹波市と、京都府福知山市、綾部市、京丹波町、南丹市、亀岡市などで収穫されたもののみ。丹波産にはもともとブランド価値が付いているので、市場のニーズが集まり供給が追い付かなくなるため、必然的に価格が上がってしまうのです。さらに、収穫時期も価格に大きく影響を与えています。乾物の黒大豆の需要は正月前の12月に集中し、この時期に粒が最も大きく育った状態で収穫できるように生産者たちは生育を調整していきます。兵庫県と京都府は昔から収穫時期が早く、新豆が12月の流通に間に合うのですが、岡山県や滋賀県は出回りが遅く、出荷は年明けとなってしまい、主に加工用原料として使われることになります。

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