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昔からの手作りを貫く思い

小麦粉から取り出したグルテンにもち粉を加えて作る生麩。シンプルでいて、実に奥の深い作業です。

その日に売るものはその日のうちに作るのが麸嘉の生麩。卸先は京都の老舗料理店が中心で、一部のデパートにも納めています。毎日電話で注文を受けて作る受注生産なので、仕込む量は日によってまちまち。特に忙しいのは、京都の観光シーズンや年末年始で、職人たちは朝から気が休まる暇もありません。それでも、生麩に練り込む梅肉は手で丁寧に裏ごしし、ぎんなんやごまもホーローの鍋で丁寧に手煎りします。頑なに手作業を貫くのは、ものづくりへの揺るぎない信念があってこそ。「よく、すべて手作りでたいへんですねと言われるんですが、やっている本人たちに特別感はありません。うちではこれがずっと当たり前やし、昔はどこの店もこうやって作っていたんですから。作業はショートカットしようと思ったらなんぼでもできるんですけど、効率ばかり追い求めても仕方ないんやないかなと。うちのやり方を手間がかかっていると見られてしまうことのほうが寂しいですよ」と小堀さん。先祖代々大事にしてきた作り手としての原点に想いを寄せます。

近所の料理屋には職人たちが毎日1軒ずつ出来立てを配達して回るのも、昔から変わらない麸嘉の日常。「配達で料理人と顔をつなぎ、硬さや味の要望を聞いてくるのも仕事のうち。納め先を知るのと知らんのとでは仕事に対する心構えも変わってきます」。毎日忙しい生麩作りを支えるのは6人の職人たち。10年働いてようやく一人前と言われる厳しい世界。職人になりたいと熱意をもって門を叩く者ばかりではなく、案外気軽に入る人も多いそう。中には、サラリーマンやフランス料理人経験者、元自衛隊員といった異色の経歴を持つ人も。地方からやってきた学生アルバイトも製造の一端を担わせ、働きながら京都を感じてもらいたいというのが、小堀さんの思いでもあります。

職人の手が生み出す味とは

生地は木枠に入れて蒸していきます。この道具も伝統の味を出すのに欠かせないもの。

生麩の主な材料は小麦粉、もち粉、水。麸嘉では小麦粉はオーストラリア産や北米産を使用し、グルテン含有率が一番高い強力粉に中力粉をブレンドして食感にバランスを持たせています。もち粉は滋賀県産や宮城県産など、国内産のものを厳選。出来上がりの状態や気候などを読みながら日々使い分け、「形をしっかりつけてほしい」「食感が硬いほうがいい」といった料理屋の細かな要望にオーダーメイドで応えられるのは手作りならではです。

生麩作りはまず、小麦粉に塩と水を入れて、生地を練るところから始まります。練り終えた生地はしばらく寝かせておいて、ある一定の時間が過ぎると水洗い。するとでんぷんが溶け出しタンパク質だけが残り、生地は濁りを帯びた色に変色します。これが主原料となるグルテンです。グルテンにもち粉を加えていくと次第に白い生麩の生地に。重量を均一にした生地を細長い木枠に入れて蒸し、水で冷やして粗熱を取ったら完成です。

急激に冷やすとグルテンが固まってしまうので、年間約15度と安定している井戸水が重宝するそう。

作り方も材料もいたってシンプル。しかし、実は奥が深いのが生麩づくりです。何十年とこの仕事と向き合ってきた小堀さんでさえ、毎日同じものを作ることはできないと言います。「生麩作りに大事なのは、生地を練るタイミング。練り過ぎるとぼぞぼそになってしまうので、一番良いタイミングを見極めるのは手の感覚が頼りです。感覚は人から教わるわけではなく、職人が個々に長年の経験の中で培っていくもんで、味や食感にも微妙に影響します。毎日作っていても、なんで今日の生地はこんなにやわらかいんやろと疑問に思ったり、いろいろとわからないことも出てくるもんですよ」。手に触れる生地の感覚が変わってきたら、配合を変えたり材料の見直しを行うのも、安定した味を生み出す秘訣。「もち粉も作物なので、毎年同じ産地で同じ状態のものが収穫できるとは限りません。ここの地域のものを使うと決めてしまうと、結局味や食感を追求できていないことになります」。素材を吟味することも職人の大事な仕事の一つです。

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