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日々の食卓にも葛料理

出来上がった吉野本葛はまぶしいほどの純白です。

葛は万葉集にもたびたび登場し、いにしえより人々の生活に身近な植物として親しまれてきました。根、葉、花は各々、体を温めたり免疫機能を高めるなど優れた薬効を持ち、健康維持や体質改善を目的として使われた歴史のほうが古いという記録も残っています。お菓子や料理などに使われるようになったのは、およそ江戸時代中期以降。当時の食文化の中心は京都や大阪にあり、各地に近いという立地が手伝って、奈良で葛づくりが盛んになったのではと黒川さんは言います。

吉野本葛は高級品というイメージがすっかり定着。全国の料亭や和菓子店で重用される一方で、そのおいしさを知らない世代も増えてきました。そこでもっと幅広い層に気軽に親しんでもらいたいと、黒川本家の東大寺店(東大寺門前 夢風ひろば 内|http://www.yume-kaze.com/)ではレストランを併設。斬新なメニューや新商品を展開しています。「葛きりや葛餅といった従来の味に始まり、季節を意識した洋風スイーツやケーキ、葛入りのパスタといった創作料理までアレンジを加えて用意しています。若い人にも葛のおいしさに目覚めてもらえるとうれしいですね」。

外で食べるだけでなく、日々の家庭料理にも葛を上手に取り入れれば、いつもの食卓が一層豊かになりそう。「京都の料亭では、葛あんを朝粥の上にかけて提供されているところがありますが、家庭で食べるときも葛あんに仕立てるとおいしく召し上がっていただけると思います。野菜や魚、肉にかけてもらうのも本来の風味が楽しめておすすめですよ。私も家でよく食べますが、うちの家系が長寿なのは、葛の効果もあるのかもしれません」。暑さに食欲が落ちたときこそ、口当たりの良い葛で元気を補いたいものです。

◆まめ知識:「吉野本葛」と「吉野葛」の違い

ところで、葛には2つの種類があることをご存じでしょうか。一般に売られている商品のパッケージに目を留めると「吉野本葛」「吉野葛」と表記されたものがあります。実はこの2種類は同じものではありません。ではそれぞれにどのような違いがあるのでしょうか。

「吉野本葛」は葛根から取り出したでんぷんだけを原材料にした葛澱粉100%のものを指します。一方「吉野葛」は葛でん粉を主原料に、サツマイモやジャガイモなどのでんぷんを混ぜたもののことを言います。もちろん、食感や風味にも多少の違いがあります。また「吉野」と名乗ることができるのは、奈良県の吉野地方やその周辺で作られた本葛と葛のみ。葛を買い求める際には、その点に気を留めてみるのも一興です。

吉野本葛の場合、1本の葛根から精製してできる葛澱粉はわずか10%ほど。葛堀り職人の減少に伴って国産の葛根の入手は年々難しくなり、純国産のピュアな製品の価値はどんどん高まっています。「本物」を味わえる機会はますます貴重となるかもしれません。

(2015年5月 取材・文 岸本 恭児)

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