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寒風と冷水の中の過酷な作業

所狭しと立ち並ぶさらしを終えた桶。底には澱粉が沈殿しています。

黒川本家で本葛づくりが始まるのは毎年12月。日ごとに深まる寒さとともに本格的なシーズンを迎え、春の足音が聞こえ始める3、4月まで集中して行われます。繁忙期を迎えた工場内には、所狭しと並べられた桶がずらり。10人ほどの職人がそれぞれの持ち場で粛々と作業を進めていきます。他の製造元では機械化が進んでいますが、黒川本家はほぼ全工程を職人による手仕事で行うことに強い信念を持っています。

頑なに昔ながらの製法にこだわるのは、長年引き立てのある一流料亭や老舗和菓子店の信頼に応え、創業以来変わらない味を納めるのが務めとの考えから。「高い品質を保つためには、工程ごとに職人の手の感覚と目で見極めていくことが非常に大事。機械任せとはいきません」と黒川さん。宇陀の冬の寒さは厳しく、一帯が雪化粧に染まることもしばしば。しかしこの環境こそ、良質な本葛を生み出すうえで欠かすことができません。「葛根を精製するには水や空気は冷たいほうがよく、手作業で行うとなるとかなり過酷。特に1月2月は身を切るような寒さの中、キンと冷えた水を扱う作業を続けていると指先が凍ってしまいます。桶も毎日動かすのですが、1つに70~80リットルの水が入っているので腰に来るんですよ」。吉野本葛の上品な味わいが後世に残されていくのは、裏方の隠れた苦労があってこそなのです。

品質を守るための「吉野晒し」

澱粉を切り出したり、不純物を取り除いていく工程も一つずつ目で確かめながら手作業で行います。

江戸時代から伝わる黒川本家の本葛づくりとはどういうものなのでしょうか。
まずは原材料となる葛根を水洗いし、機械にかけて削り繊維状にしていきます。次に、繊維状になった葛根を清廉な地下水でさらし、でんぷんだけを取り出します。この不純物を多く含んだものを荒葛といいます。そしてここから、伝統的な吉野本葛づくりの中でも出来上がりの品質を左右する大変重要な工程「吉野晒し(よしのさらし)」へと移っていきます。荒葛を水で撹拌して桶に流し、2日ほど置いて沈殿させます。沈殿した桶の上水を捨て、切り出した葛から包丁で不純物をそぎ落します。葛の様子を見ながら5、6回ほどこの作業を繰り返していくと黒く濁っていた上水も徐々に澄んだ色に変化。桶の底に純白の澱粉が沈殿していきます。

吉野晒しを終えると、本葛づくりもそろそろ折り返し地点。水分が残った状態の生葛を桶から職人の手で切り出していきます。最後に不純物を包丁でそぎ落とし、それをさらに小割りにして木の箱に並べ、風通しの良い倉庫で2、3か月かけてゆっくりと乾燥させていくのです。乾燥が終わると純白の吉野本葛が完成。手塩にかけてつくった本葛は、検品も人の目で行うのが黒川本家のこだわりです。一つずつ手に取って品質を確かめながら、丁寧に袋詰めや箱詰めされ、お客さんの元へと届けられます。

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