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食体験を通して自信を育てる

包丁を持つ手はすでに一人前。見守りスタッフのサポートがあるからこそ親御さんも安心。

坂本さんが活動の拠点とするサカモトキッチンスタジオでは、五感で学ぶ子ども料理教室「キッズキッチン」を開催しています。これは料理のテクニックを教えるための教室ではなく、子どもたちが視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を使って調理を行うことで新しい自分を発見したり、新鮮な体験を積み重ねて豊かな感性を育むことを目的としています。また、食材と向き合うことで食べることへの積極性も養います。

対象年齢は2歳から小学校6年生まで。レシピは子どもの手や能力に合わせてアレンジし、細かな調理手順や方法もスタッフ間でデモンストレーションを重ね、ブラッシュアップします。調理実習中は安全に配慮し、1テーブル4人の子どもに対して2人の見守りスタッフがついてはいるものの、主役はあくまで子どもたち。スタッフのサポートは最小限に抑え、最初から最後まで自分の力でやり遂げます。「子どもに子どもだましはしない」のが坂本さんの信条。作る料理は大人も顔負けの本格派です。食材は旬を意識し、市場から仕入れた鮮度の良いものを使用。タチウオのシーズンには身を棒ずしにし中骨ですまし汁を、イカナゴが豊漁を迎えると、くぎ煮やかき揚げに挑戦するというから驚きです。

「粉を練ってピザ生地を作ることも、魚を三枚におろすのも子どもたちはお手のもの。お母さんでも嫌がるような手間のかかる作業を、みんな目をキラキラと輝かせながらやっていますよ。料理は子どもたちの見えない力を引き出してくれるんです」。

食教育で子どもに生きる力を

レシピのアイデアがひらめくと即実践。台所は坂本先生にとって大事な実験室です。

今の日本の子どもたちは、ニートの増加や学力低下などさまざまな問題を抱えています。その根底にあるのは自己尊厳感の低さだというのが坂本さんの見解。「今、高校3年生の95%以上が自分に自信を失っているというデータもあります。私が子どもたちに料理を教えているなかで学んだことは、どんなに大人が言葉で褒めても、子どもが自らの体験を通して自分自身を認められなければ、本当の意味での自信にはつながらないということです」。

子どもたちの自己尊厳感を高めるために大人ができるのは、幼いころからいろんな体験をさせて「やった!こんなに難しいことが自分にもできた!」という実感を積み上げることだと坂本さんは言います。そして、キッズキッチンがそのツールの一つになると続けます。「子どもたちには料理を通して、自分の人生を生き抜く力を身に着けてもらいたいというのが私の強い願い。子どもたちに生きる力とは何かを通訳していくのが私の役割だと思っています。『ひとりでできるもん!』で子どもたちがごく当たり前のようにキッチンに立てる環境を作ることができ世の中を変えられたように、キッズキッチンでもう一度世の中を変えることができたら、それが私の仕事のゴールなのかもしれません」。

(2015年4月 取材・文 岸本 恭児)

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