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―このスープ食の活動を通して、みなさんが学んだことはありますか。

マグカップに野菜のコンソメスープがゆっくり注がれていくと、辺りに良い香りが広がります。

井川先生 食事は栄養をとるだけでなく、その人の文化であり、生きていることを代表すること。スープを少し飲んだだけで栄養がつくわけではないですが、元気になるきっかけになるというのは感じます。
柿原先生 スープを持っていくと、どの患者さんも顔が和らぐんです。消えかかっている命の灯が、またぽっと灯るような。スープを飲んでいる間はしんどさも痛みもありません。このような瞬間に立ち会うと、医師は投薬したり手術をしたり、病気ばかりをみてしまいがちですが、それではダメなんだということを実感します。食事をとることで人間らしさを一瞬でも取り戻せるんですよ。緩和ケアの患者さんは使える薬も限られていますし、残念ながらその効果もほとんど得られません。そんなときに食や食を通してのコミュニケーションがすごい治療戦略になるんだと教えてもらいました。

山口さん 患者さんにとって食事は楽しみの一つなんですよね。それがカップにたった半分のスープでも。ずっと寝たきりだった人がスープのポットを見てむくっと起き上がる姿を見ると、食と人間がいかに密接にかかわっているかということがわかります。病院で普通に出す食事ももうちょっと工夫できればと思いますね。
増田さん 患者さんたちが両手で器を取って飲んでくださるのを見ると、感謝の心が伝わってくるんです。こっちがありがとうございますと言いたくなるくらい。こんな機会を作ってもらえて本当にありがたく思っています。その一方で、前回スープを持っていった患者さんが次はいらっしゃらないことも。今までは生と死を目の当たりにすることがなかったので、戸惑いもあります。
西谷さん 息を引き取る間際まで食べる喜びを伝えられるのが、このスープのすごさだと思います。まだ食べられることを実感することが生きている証。フルーツやおやつでなく、最期までスープという食事をいただくことに意味があるんですよね。

―この取り組みに対する今後の展望を教えてください。

消化器内科医長 緩和ケアチーム 河端秀明先生

山口さん 今は緩和ケアチームからの依頼を受けて特定の患者さんだけにスープをお出ししていますが、もう少し幅を広げて食欲不振の人などにも提供していきたいです。
柿原先生 終末期の患者さんだけでなく、広く入院患者さんに味わってもらって、おいしさを感じてもらえたらと思います。
河端先生 私は、このスープ食への取り組みを緩和医療学会で発表しましたが、聴講者からは良い反応をいただきました。スープ食の活動は他院でも実施されていますが、どこも良い結果が出ているようです。終末期を迎える患者さんはだんだん食べられなくなってくることで精神的にも参ってしまいます。私たちが食べる喜びとともに生きる喜びを伝えることが、患者さんの苦痛を和らげる一助となると信じています。

―今日は貴重なお話をありがとうございました。

(2014年12月 取材・文 岸本 恭児)

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