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―今日は取材のためにスープをご用意いただきました。

栄養課NST 管理栄養士 山口真紀子さん

増田さん ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、昆布、干しシイタケなどが入った野菜のコンソメスープです。澄んだ黄金色でしょう。このように仕上げるには鍋を触らないことが重要。火加減に気を配り、じっくり火を通して最後はガーゼで丁寧にこします。もちろん無添加。やさしい甘さの中にきちんと旨みが感じられて、患者さんに人気なんですよ。
山口さん 毎週月曜と水曜の提供日をみなさん楽しみにしておられます。5種類の味の中から患者さんに選んでもらった1種類をお出ししていますが、初めての人は万人受けする野菜コンソメかすまし汁を提供することが多いですね。
柿原先生 野菜のコンソメスープは野菜をカットする厚みまで決まっていて、手間がかかってこそ出せる味。本当に繊細なスープです。

―スープを作る際に気を付けていることはありますか。

山口さん 塩分です。始めたころは毎回塩分濃度を微調整して、患者さんに「今日は濃いね」と言われたときは記録をつけていきました。今はだいたい0.7%前後。通常の汁物は1%くらいなので少し薄いくらいです。和風の味もほしかったので、すまし汁をメニューに加えました。昆布はいいものを使おうと病院のコスト内で許されるものをいくつか取り寄せて吟味しました。
増田さん 普通のすまし汁よりは昆布の味が立っています。すまし汁は辰巳さんの本にもレシピはなく、当院のオリジナルです。
西谷さん 味覚障害があり食事がのどを通らなかったうどん屋の大将が「間違いない。これは店でも出せる」と太鼓判を押してくださったのがすまし汁。味覚障害がある患者さんに認めてもらえたことは自信につながりました。

―では、患者さんにスープを提供する際に心がけていることは。

看護部看護師長 緩和ケアチーム
がん看護専門看護師 西谷葉子さん

西谷さん 私はスープを提供する場に必ず同席し、患者さんの嚥下の状態を確認しています。安全に飲んでいただくことが何より大切なので。
増田さん 作り手としては温度ですね。最初のころは湯気が出ているのに勢いよく飲む患者さんが多かったので、やけどを心配しました。今は温度計のついたポットにスープを入れて運び、病態によって適温が違うので継続的にデータをとっています。
山口さん 器はあえて病院の食器を使わずに、花柄のマグカップに注ぎます。器にもこだわったのは、持ちやすさや飲みやすさに加えて、スープへの抵抗感をなくしたいという思いが強かったからです。
増田さん おかわりを希望される人は「今日中に飲んでね」と伝えてベッドサイドに置いて行くこともあるので、温め直せるようにふた付きでレンジ対応のものになっています。

―スープを飲んだ患者さんやご家族の反応はいかがですか。

西谷さん 患者さんのご家族にも一緒にスープを飲んでいただいていますが、とても喜ばれています。
井川先生 入院してしまうと、家族で同じ料理を囲み食事をすることがなくなるでしょ。おいしさは味うんぬんだけでなく"誰かと一緒に食べる"ということが大きいんですよ。
西谷さん スープ食には計り知れないパワーがあります。以前、全く口腔ケアをさせてくれず嚥下が乏しくなった終末期の患者さんがいらっしゃいました。でもスープならいけるかもしれないからチャレンジしようということになって。とにかく口の中をキレイにして、口に何かを入れることに抵抗感をなくしてもらって、まずすまし汁の香りを嗅いでもらいました。すると「おっ!」と良い反応が返ってきて、飲んでもらえたんです。それ以来活動も活発になって「~したい」という欲求も出てきました。
井川先生 絶食の患者さんは点滴で栄養は入れていても、食事を食べていないと無表情になってきます。食べられるようになると本当にイキイキしてきますよ。食材の旨みや味覚がきっと脳を刺激しているのだと思います。

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