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生徒たちとの交流による原点回帰

自然に囲まれた坂越の町並みに、ひときわ風情のある酒蔵が目を引きます。

高校生たちと共に酒づくりに取り組むようになって、自分も刺激をもらっているという奥藤さん。生徒に工程を説明したり作業を教えたりすることは、基本に立ち返る良い機会だと襟を正します。 「上郡高校の生徒たちは毎年一生懸命やってくれるし、チームワークがいいなという印象。酒づくりの朝は早いんですが時間も順守し、作業開始の20分くらい前には蔵に来て準備していますよ」と、生徒たちの真摯な姿勢を高く評価します。

今年のインターンシップでは、麹づくりや蔵の掃除も経験した生徒たち。奥藤さんは作業を通して、何に対しても丁寧に行うことの大事さを教えています。「酒づくりの作業は適当にも先延ばしにもできません。しんどいからこれくらいでいいかと中途半端にするのではなく、決められたことは丁寧に責任をもって最後まで行うこと。勉強でも手を抜けば必ず後で自分にしわ寄せがくるでしょう。仕事も同じです。社会に出る前に、お金をもらって仕事をすることの厳しさを少しでも実感してもらえたらいいなと思います」。
生徒たちが米を作ってくれるから今年も酒が仕込めると、感謝の気持ちを言葉にする奥藤さん。温かな指導が生徒たちの心を育てています。

思いを一升瓶に詰め込んで

「上高夢錦」の銘柄ラベルは、初年次に酒づくりに携わった生徒のデザインを採用しています。

12月下旬ごろ、同校の兵庫夢錦は「純米 上高夢錦」のラベルが貼られ蔵出しを迎えました。農作業の苦労に思いを馳せながらしみじみと味わう酒は格別と栗山先生。上高夢錦は例年、口当たりが良く癖のない仕上がりで好評なのだそう。

毎年、先生や親御さんの期待を背負う奥藤さんは、米一粒も無駄にできないと全力で酒づくりに挑みます。試飲して思った通りの味に仕上がっていたときの満足感が次の酒づくりへの活力。「そのうえで、親御さんや一般のお客さんたちの喜ぶ顔と『うまい』のひと言が聞ければ、作り手としては何よりですよ。生徒たちは残念ながら飲むことができませんが、大人になったときに醸造体験の思い出を振り返りながら日本酒を飲んでくれればうれしいですね。大変な作業を経験しているんですから、きっと1杯を大事に飲んでくれるんじゃないかなあ」。

多くの人の熱い思いを詰め込んだ上高夢錦。高校生たちの真剣な取り組みと熟練された職人の技が生んだ地酒が、これからもこの地を盛り上げます。

(2014年11月 取材・文 岸本 恭児)

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