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ぶどう畑存続のピンチが生んだもの

収穫時期を迎えるたわわに実ったぶどう。今にもこぼれ落ちそうです。

日本のワインに対して、高井さんも長年危機感を抱いてきました。このところの一番の問題は、大阪のぶどう畑がどんどん衰退していくことにあります。

「ぶどうの栽培は重労働。農家の高齢化が進み、畑を維持できなくなるところが増えてきて。私のところにはよく栽培依頼の電話がかかってきます。若い人たちは地域間競争が激しく、値が下がるなどの理由でぶどう栽培を嫌煙しがち。大阪には現在6社のワインメーカーがありますが、私たちは地域にぶどう畑があるからこそワインメーカーの存在意義があると思っています。だから今こそみんなで力を合わせて大阪のぶどう畑を残さないといけないと、必死に努力をしているんですよ」。

住宅地と隣接するように、ぶどう畑が広がります。

高井さんに栽培依頼の声がかかるほとんどがデラウェアを栽培する畑だそう。デラウェアは一般的に生食用として好まれるもので、ワインに向かない品種。カタシモワイナリーでは栽培していませんでした。「畑を預かったら、いったん木を切ってワイン用の品種に植え替えてという作業をしていました。でもそんな手間をかけていたら、商品になるまで7、8年はかかってしまいます。それならいっそのことデラウェアでおいしいワインを作ったほうが早いと思って。試行錯誤を重ねて誕生したのが、この"たこシャン"なんですよ」。当初はタコ焼きに合うワインというコンセプトで商品開発されたたこシャンでしたが、さわやかな香りとすっきり軽やかな口当たりは料理を選ばず、イタリアンやフレンチにはもちろん、和食ともマリアージュ。年間3万5,000本ほどの生産量では追いつかず、発売後約1週間で完売する大ヒット商品に。

デラウェアはワインのつくり手から見ると"くずぶどう"。そんなに売れるわけはないという高井さんの予想を大きく裏切り、大阪ワインの代名詞と言われるまでに成長しました。「今はうちの畑のぶどうだけでは足りなくなるくらい売れています」。うれしい悲鳴に、畑で実るデラウェアたちも誇らしげです。

デラウェアが広げる日本のワインの可能性

大阪産デラウェアを使用した大人気のたこシャン(右)と、新商品のNOUVEAU(左)。厳重な管理のもと高い品質が保たれています。

ここ数年、ワイン愛好家のなかでは日本のワインの質が上がってきていると評判だそう。これは高井さん自身も実感していることで、輸入ワインと日本のワインに差がなくなってきていると胸を張ります。そのうえで「私たちが作りたいのは日本的なワイン」と強調。ワインに適したぶどうの品種といえば、メルローやピノ・ノワール、シャルドネなどヨーロッパのものがトップに君臨し、その味がスタンダードという意識が消費者の中に根強くあると言います。「私はそれを覆したいと考えています。デラウェアで作ったワインがヨーロッパの人や日本の若い人たちにもおいしいと言ってもらえるよう努力していきたいですね」。

高井さんは昨今、たこシャンに継ぐものをと、デラウェアを使った新しいワインの商品化に意欲的です。今年市場に初お目見えする白ワイン「NOUVEAU」。こちらは華やかな香りが特徴のやや甘口なタイプ。たこシャンとは異なる趣きで、同じデラウェアから作られたものとは想像ができません。「ワインは化学。技術革新により、同じ品種から全く違う味のものを生み出せるようになりました。醸造技術を駆使することによって、デラウェアという素材が持ついろんな面を引き出すことができるようになったんです」。

また、デラウェアはヨーロッパ系などの品種に比べると病虫害や気候の変化に強く、栽培地を選ばないことも強み。農薬の使用量を一般の3分の1以下に抑えて育てることができるのもデラウェアならではと、高井さんはその秘めた可能性に大きな期待を寄せます。

(つづく)

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