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漁師からも信頼されるノウハウ

プロの方々を前に講演する山嵜さん

兵庫県漁連を退職し、今は"フリー"となった山嵜さん。講師として地方に招かれる機会も増えてきました。秋田、新潟、福井、広島など日本全国、呼ばれれば店を休んでも駆けつけます。行政の水産課の人や漁師さんといったプロに向けて話すことも多く、テーマは「漁業者の収入アップにまつわること」。

漁師さんたちは魚を獲ることにかけては一流でも、獲った魚を高く売ることに関しては無頓着な人が多いそう。そこで講義では、獲った後の鮮度をより良く保ち、市場で今より高値で売る方法を具体的にレクチャー。「魚を水槽で保存する方法や、鮮度を保つ魚のしめ方など、実践も交えつつかなり踏み込んで教えています。たとえば、魚を置くときは必ず左頭で、氷は下に敷いてはダメとかね。鮮度を落とさないための一般的なセオリーも、知っている漁師さんが少ないのが現状なんですよ」。

神経抜きの様子。針を突き刺して行うため、
魚の見た目が大きく崩れることはない

数ある技のなかでも、山嵜さんが熱心に伝えているのが神経抜き。魚をしめて血抜きをしてから脊椎の中に通っている神経を破壊するという特殊なテクニックです。魚は死ぬと死後硬直が始まりどんどん劣化していきますが、この方法だと死んだ情報が体内の細胞に伝わらず、死後硬直が始まる時間を遅らせることができるんだとか。「ということは、港から遠方へ魚を送る際、送った先でも比較的良い状態で食べられるということ。また、死後硬直するまでの間は身のタンパクが分解されて甘みと旨みが出てくるので、おいしさも増すんです」。山嵜さんが披露してくれる話には、なるほどとうなずける情報が盛りだくさん。漁業関係者から信頼が高いというのも納得です。

実験で身につけた知識

山嵜さんが料理教室や講演などで披露している技は、誰かに教わったわけではなく、ほぼ独学で身につけたものばかり。シェフや漁業関係者など人伝てに聞いた方法を、明石で水揚げされる年間約130種類の魚を材料に"実験"しては、情報の整合性を確かめました。凝り性な性格も手伝って、いつしか実験は山嵜さんの趣味に。

「テーマは毎年1つに絞っています。たとえば、今年は全種類を刺身で食べてみようとか。すべてを干物にした年もありました」。すると、今まで知り得なかった魚の生態をより深く掘り下げられ、おいしく食べる最善の方法を模索できると言います。数々の実験を繰り返すなかで、目からウロコの技法に出合うことも。その一つが紙塩。魚の鮮度を長期間保つ究極の裏技です。「活じめにして血抜きした魚を3枚におろし、和紙を当てた上からぱらっと塩を振るんです。すると、普通は2日ほどたったら食べられなくなる青魚の刺身も、塩の殺菌効果で保存能力が格段にアップ。僕はアジで試し、1週間毎日食べ比べてみましたが、何の遜色もなくすべて生で食べられたんですよ」。

今では専門性の高いこんな技法も、昔は家庭の台所で普通に行っていたんだそう。このように、衰退していった魚食文化を復興させることは、山嵜さんが掲げる最も大きな命題です。

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