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現代の家庭環境と食の問題

親の役割とは

子供は、一生を生きるだけのエネルギーを生まれてから数年の間に与えられなければなりません。そのエネルギーというのは愛情です。具体的にいうと、皮膚と皮膚の接触、スキンシップですね。ところが、国というのはしばしばとんでもない間違いをするもので、昭和39年にそれまで母子手帳にあった母と子の習慣をいけないことだとして削除してしまったのです。それまでの日本の母親が伝統的に受け継いで来た子供への係わりというのは、添い寝、おんぶ、抱っこ、おっぱいでした。これを当時の厚生省は、アメリカではそういうことをしない、自立する子供に育てるにはそれはいけない、としたのです。だから、今どこを見ても子供をおんぶする母親はいませんね。しかし、アメリカでは確かにしないのかも知れませんが、あちらでは言葉として、「I love you.」と日頃から伝えます。キスをしたり、ハグをしたりしますね。だからアメリカにはアメリカのスタイルがあるわけなのです。一方、日本の場合は、そういう愛情表現はしない上に、古くから受け継がれてきたものが国の方針で廃れてしまった。ある人がそれに気付いて訂正を国に呼びかけ、10年かかって元に戻したのですが、もう遅かったのです。私は皮膚と皮膚の接触はすごく重要なことだと思っています。それともう一つは、「食」です。母親の手作りのごはんは、単なる食べ物ではなく、愛情を物質化したものだと思います。食事も誰かと食べることによって美味しくなったり、不味くなったりしますよね。今は両親が共働きである場合も多く、結局子供が一人で食事をする。家族一緒に食事をすることが、週に一度もないような家庭もあります。これがやはり今の日本における家庭の食事において大きな問題だろうと思います。

元来、食事の時間がしつけとか教育の時間でもあったと思います。私は北海道の田舎に生まれ育ちましたが、北海道はどちらかというと味付けが濃いのです。私も醤油をたっぷりかけたりするのですが、そうすると醤油が余ります。そのままにしておくと、父親に叱られました。余った醤油はお湯を足して飲みなさいと。子供の頃はどうしてこんなにやかましく言うのかと思っていましたが、我々の世代の父親というのは絶対的存在でしたから、そういった食べることを通じて食を大切にする心や、目上の人への敬いを昔は学んでいたと思います。

共感することによって子供を理解する

家庭で重要な「愛情」と「敬い」。愛情と尊敬心の2つが、家庭環境を作り上げる上で最も重要だと思います。それは、夫婦の関係の中から作られていくものではないでしょうか。子供はどうしても母親に密着しますから、子供に一生を生きるだけのエネルギーを与えるのが母親の役目となります。しかし、常に接近して暮らしていると慣れも出ますし、子供は段々生意気になっていきます。だから、それをチェックする存在が父親だと思うのです。私はよく、「家庭での権力は母親に、父親には権威を」と申します。権威といっても、それは威張ることとは違います。そして、母親は理想の父親を演出してあげることも大切です。今までの心理学から言いますと、権威のある父親のもとで育った子供は、正義感と強い信念を持ちやすくなるのです。人間は生きる上でルールを守らなければいけませんので、その意識を子供に持たせるという上でやはり父親が権威、つまり家庭の中で一目を置かれる存在であるべきだと思います。それを父親も自覚しなければなりません。
そこで大切になってくる要素は、共感することだと思います。共感の世界が出来て初めて愛が愛として子供の心に伝わるわけですね。だから共感が出来ない時に子供に注意をしても無駄なのです。夫婦の間でも人間として共感する世界を育てていくことが大事だと思います。その共感の心を育てていく重要な材料として、食が位置づけられるわけです。食を通じて共感の世界を育てていく。その辺りをもっと見直していくべきではないかと思います。

子供のほめ方

子供への共感なしにしつけをしようとする、子供の心が見えていない親御さんが増えています。特にエリート志向の親御さんほど大きく危険なミスをする傾向にあると思います。なぜ見えないかというと、自分の中での思い込みが優先し、こうあるべきだという目で見るからなんです。なぜその子がそうするかを素直に見ようとしないのです。我々が皆さんに申し上げていますのは、まず子供への接触による愛情、それから笑顔、そして肯定的な言葉。特に子供の長所をきちんと把握しましょうと。長所を見つけるには切り口が3つあります。それは、容姿・容貌、能力、性格。具体的に子供のチャームポイントは、どこなのか、能力はその子の特徴(得意なこと等)ですね。それから性格。常に子供の長所への評価を具体的にメッセージとして子供に伝える。自分が親から評価されているとわかれば、叱られても素直に聞けるものだと思います。だけど、それをしないで叱るから自信を失くしていくし、反発するんです。親の枠で見てはいけない。子供はどういう可能性を持っているかわからないのです。自分の子供であっても何十代もの先祖と繋がっていて、色んな人生が受け継がれているわけですから、勝手に親が決めてはいけません。ですから、青少年の犯罪を見るたびに惜しいなと思うのです。この子に良い出会いがあったら、絶対こんなことにはならないのにと。そのためにも、せめて親が子供の長所をきちっと把握して、伝えられるようになってもらいたいと思います。世の中に自分を認めてくれる人が一人いれば、そんなに簡単に人間は間違った方向へは行かないものだと思います。

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