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今年、開港150年を迎えた神戸港。港の歴史とかかわりの深いお菓子はさまざまありますが、和洋が融合した瓦せんべいは神戸の洋菓子文化のルーツです。誕生のヒントとなったのは、海外から大量に輸入されるようになった砂糖・小麦粉と、当時は高級品だった卵。それらを贅沢に使い焼き上げた1枚は、庶民の憧れとなりました。

炭火で1枚ずつ手焼きしていた昭和20年代の製造風景。すすが出ないように作業前に炭を洗っていたそう。昔からある鉄型は今も現役。ずっしりと重く高温になる道具を操るのは重労働。職人たちの苦労がしのばれます。

創意工夫から生まれたせんべい

小麦粉、卵、砂糖。欧風菓子になくてはならないこの材料に、日本伝統のせんべい作りの技術をかけ合わせてみてはどうか――。亀井堂総本店創業者・松井佐助氏の頭の中にふと浮かんだ斬新なアイデアが形となったのは明治6年のこと。当時、もっとも人通りの多かった西国街道沿い(現・元町通り)に店を構え、戸板1枚程度のスペースで手焼きされていたせんべいは瞬く間に評判となり、神戸の名物に。明治24年にロシア皇帝ニコライが神戸港に立ち寄った際は皇室からの手土産にもなったほど。とはいえ西洋文化に憧れる庶民にはまだ手の届かない高級なお菓子で、「ハイカラせんべい」や「ぜいたくせんべい」とも呼ばれていました。

明治23年に東京で開催された第3回内国勧業博覧会に出品されると、一躍その名と味が全国に知られ、東京に支店を持つまでに(現在は上野亀井堂として営業)。時を同じくして、広く愛されるようになればとのれん分けを始めました。50年ほど前までは大小合わせて約100社が瓦せんべいを作り、今日まで人々に愛され続ける超ロングセラーお菓子へと成長しました。昭和33年から週刊誌で連載が始まった菊田一夫の小説『がしんたれ』の書き出しに「亀井堂の瓦せんべいは神戸の名物である」と書かれていることからも、その人気ぶりがうかがえます。

焼印は1枚ずつ職人の手で。その日の湿度や気温を読みながら独自の製法で生まれる味には繊細さもあります。水分が程よく抜けて形が整った瓦せんべいは、調湿性に優れたブリキの箱で一旦保管されます。

“昔ながら”に忠実な優しい味

瓦せんべいに用いる基本の材料は今も昔も大きく変わることはありません。はちみつを加えて甘さにコクと深みを与え、味にダイレクトにかかわってくる砂糖と小麦粉は独自の配合でブレンド。よりオリジナリティを究めるため必要に応じて素材は吟味しています。

また製造方法は一部を機械化し作業効率を高めながらも、職人の感覚が頼りの生地作りや焼印押しは手仕事を貫いています。本店にある工場では職人が毎日あわただしくせんべいを焼き、瓦せんべいは1日1人あたり8000~1万枚を製造。生地をプレスして焼き上げる鉄板を開くと、湯気とともに均一に焼き色がついた瓦せんべいが姿を現し、甘い香りが鼻をくすぐります。

「焼いてすぐはやわらかくフラットな形ですが、湾曲した木の型板に乗せて1分ほど水分を蒸発させることで、さくっとした食感と瓦の形に整います」とは、亀井堂総本店の未来を担う松井隆昌さん。特徴的なアーチ型が生まれたのにはこんな裏話も。「瓦が県の特産品で縁起ものであったことや創業者が古代瓦のコレクターだったことだけでなく、実は割れにくいという利点も備えていて、理にかなった形なんですよ」。

やわらか焼きの型は焼き上がりの表面にツヤを出すため、真鍮製であることが必須。店頭では手焼き風景が見学できるスペースを完備。タイミングが良ければ職人たちの技が見られるかも。

伝統を守りつつも革新的に

変化をいとわず前進を続けた創業者の意に沿い、創業140年を超えた今こそ飛躍を求めたいと松井さん。「震災前までは瓦せんべいだけでなく、シュークリームやショートケーキも店頭販売していました。ジャンルにとらわれないことが当社の特色であり強み。和洋の枠を超えて地元の人に食べていただける日常づかいの生菓子を復活させたいと思っています」。 

その一方で、年々深刻化する職人の減少や高齢化に歯止めをかけたいと若手の育成にも注力。さらに100年、200年と伝統を継いでいくことに目を向けていきたいと熱く語ります。

やさしい口どけと甘さの奥にあるのは、時を経ても色あせることのないものづくりへの思い。歴史に新たな名を刻む革新的なお菓子が生まれる日も近いのかもしれません。

亀井堂総本店のおすすめ

瓦せんべい

長く愛され続ける看板商品。小瓦(7㎝角)から特大瓦(27㎝角)まで4つの大きさがあり、神戸土産の定番です。

瓦まんじゅう

瓦せんべいの材料をベースに焼き上げたカステラ生地の中には極上の小豆あんがぎっしり。上品な甘さで食べ応えがあります。

やわらか焼き

1枚ずつ丁寧にふんわりと焼いたお菓子。風味や食感はカステラとせんべいのいいとこどり。

クリームハッピー&クリームパピロン

さっくり軽い食感のロール状生地にクリームを詰め込んだ欧風菓子。バニラ、チョコ、ストロベリーなどバリエーションも豊か。

DATA:

亀井堂総本店

兵庫県神戸市中央区元町通六丁目3番17号

TEL 078-351-0001

営業時間 9:00~19:00

定休日なし

ホームページ http://www.kameido.co.jp/

(2017年2月 現在)

 

亀井堂総本店 からのメッセージ

ご希望のデザインやネームの焼印をお作りし、小瓦に押したオリジナル瓦せんべいのオーダーも受け付けています。プレゼントや記念品におすすめです。気軽にお申しつけください。

【取材レポート】
昔はすべての工程を手作業で行っていた瓦せんべい。サイズが大きくなればなるほど均一に火を通して焼き上げるのが難しくなり、職人たちは腕を競い合っていました。そのなかでいつしか小瓦から特大瓦まで4つのサイズが生まれ、当時を懐かしむかのように今も販売されています。ちなみに特大瓦は本物の屋根瓦の実物大。贅沢にかじりついて1枚を独り占めしてみたいものです。

 

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